81話 旅へ行きたい
そして、旅行当日。
晴葵達は電車に揺られていた。
「ここまでの外出は数年ぶりよ……」
少し緊張気味に千弦が呟く。
「ふっ、安心されよ。拙者の聖なる加護の領域におれば、緊張など瞬く間に消滅し、安らかな時間が過ごせよう」
電車の中でも、おかまいなしに決めポーズで呟く匡也。
叫ばないだけマシか……。
「にしても、夏休み初日はいい狙い目だったかもしれないよ」
「どういうことですか?」
ボックス席に晴葵と並んで座る文菜が聞いてくる。
「夏休み初日、しかも、早朝ということもあって、あまり混んでいないように見えるからね」
確かに、長期休暇なので混んではいるが、あと2、3日すればもっと混むかもしれない。
「そうだね。そう考えるとラッキーだったかもね」
ボックス席に女子を座らせ、横で立っている匡也と幸大。
晴葵を含め、男子は交代で座ることになった。
そして、会話も弾んできた頃。
「お、一度目の乗り換えだね」
「ここの次はどこで乗り換えるのかしら?」
「『天空寺』さ」
千弦の質問に晴葵が答える。
「おぉ、ミナミでござるな!拙者の愛する強者の街が近くにあるでござる」
匡也が興奮気味に話す。
「あぁ、電気屋街か。確かにあそこは大きいね」
「それで『天空寺』で乗り換えて……次は?」
文菜がウキウキしたように尋ねてくる。
「『天空寺』で乗り換えて、『歌山駅』に行って、送迎バスが来てくれる予定だよ」
「じゃあ、もうちょっとだねー!」
小弓が元気に喜ぶ。
いや、まだ90分くらいあるけどね。
と、幸大は心の中で小さくツッコミを入れる。
「まぁ、みんなで話していればすぐさ。元気に行こうじゃないか」
「「おー!」」
そして、昼前に歌山駅に着いた晴葵達は、送迎バスが来るまで、昼食の場所で時間を潰したのだった。
「いらっしゃい。晴葵くん」
「お世話になります。これ、よければ皆さんで召し上がってください」
いつもの変態とは思えないほどの丁寧、そして紳士な口調で、迎えてくれた旅館の男性に手土産を渡す晴葵。
「ははは、そんな畏まらなくてもいいんだよ。お友達も多いみたいで安心したよ。当旅館自慢の、離れにある露天風呂付き客室でいいかな?」
「本当に何から何までありがとうございます」
深々とお辞儀をする晴葵。
「拙者、せっかくこんな豪華なところに来たのでござる!海の幸が食べたいなり!」
「こら、匡也!」
興奮度MAXで叫ぶ匡也を注意する千弦。
「はは。それじゃ、海の幸満載の夕食を用意させてもらうよ」
豪快に笑って頷いてくれる男性。
「本当にありがとうございます」
もう一度お辞儀をしてから晴葵達はチェックインを済ませて部屋に向かった。
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