8話 異常を知らせる音
あれから数時間。
晴葵達はトーナメント式の対人戦を行っていた。
このシステムの殆どを作り性能を理解している匡也を除いて、第一試合は晴葵と幸大。第二試合は文菜と小弓。そして、第三試合は一戦目二戦目の勝者同士。ラストに製作者の匡也と対決である。
現在は第三試合。晴葵と文菜の試合である。
「それではよいか?始め!」
「遠慮しませんよ、晴葵先輩!」
「ふふふ、揺れる胸が実に素晴らしい」
匡也の合図と同時に文菜が斬りかかる。
「いよっと」
華麗に避ける晴葵。
「どうした?俺はまだ文菜の谷間にズームしたままで太刀筋すら見ていないぞ」
にやけながら晴葵が言う。
「ちょ、どこ見てんですかー!」
慌てて胸を隠す文菜。
「このメガネ、ズーム機能もあるのか……後で教えてもらおう」
幸大がポツリと呟く。
「ん、幸大先輩何か言ったー?」
キョトンと小弓が聞いてくる。
「え、あ、いや。相変わらず晴葵は素早いなと思ってね。あはははは」
幸大が慌てて誤魔化す。
「えい!」
「甘いぞ!見切った!」
晴葵が素早く横に躱し、カウンターの居合斬りをする。
「きゃ!」
文菜のガラケーが振動して、メガネに映った白い体力メーターが減る。
「隙あり!」
さらに晴葵の縦斬り。
文菜の体力メーターがゼロになり、警告音と共に『LOSE』の文字。
「あー、負けたー!」
しょんぼりする文菜。
「フッ、俺の居合斬りに勝とうとは百年早いぞ」
「僕もその居合に負けたよ」
幸大がため息混じりに言う。
「ククク、やはり拙者の相手は貴様というわけか。晴葵よ」
「ここまで来たら勝ちたいねぇ」
匡也と晴葵が向かい合う。
「どっちも頑張ってー!」
「晴葵先輩、ファイトー!」
両方を応援する小弓と晴葵を贔屓する文菜。
幸大は迷った挙句。
「どっちも頑張れー!」
無難な方を選んだ。
自分のどちらか選べない平凡加減が少し嫌になる幸大。
「行くぞ、晴葵よ!」
「来い、匡也」
「じゃあ、はじ」
め。
幸大が宣言する寸前。
ビービーという警告音と共に、全員のメガネが『ERROR』という文字だらけになる。
「わわっ!」
「なになにー!」
「晴葵先輩、変なの出たー!」
「晴葵、これは……!」
「まぁまぁ、落ち着いて。全員メガネを一旦外そう」
晴葵の提案でメガネを外す一同。
同時に警告音も止まる。
「ふぅ、驚いた」
幸大が驚いた顔で晴葵を見る。
「ビックリしたねー」
「ホントに。今のエラーってなんですか?」
小弓と文菜も晴葵を見る。
「うーん。そういう詳しい所は匡也の担当だからねぇ……どうだい?」
晴葵が匡也に尋ねる。
「ふむ。拙者の頭脳が無言を貫いておる」
「つまり、わかんないんだね……」
晴葵が「仕方ない」と頷く。
「とりあえず、この問題はまた後日ということで。お昼だし食事に行こう」
全員が時計を見るともう正午を過ぎている。
五人は昼食のために外に向かった。
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