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75話 リーダーの過去

『お前、なんでいるんだよ』


『こっち来んなよ』


『キモい』


『あのさ……消えていいよ』


「うあ!」


 飛び起きる晴葵。


 気がつけば自分のベッドだった。


「あ、みんな!晴葵が起きたよ!」


 晴葵の横にいた幸大が大声でメンバーを呼ぶ。


 ドタドタと階段を登ってくる音。


「晴葵先輩!」


「晴葵!」


「ぶ、無事であるか!?」


「晴葵……先輩……」


 トコトコと近づいて、晴葵の服の袖を握りしめ泣き出す文菜。


「みんな……し、心配かけたね!ごめんごめん。俺はもう大丈夫だから!さぁ、君たちは学校に」


 パン!と千弦が晴葵にビンタする。


「ちょ!千弦殿!?晴葵は高熱で……」


「うるさい!私はみんな程甘くないわよ。晴葵、あなたは危険だったの!もう少しで車に()かれかけたのよ!そうなったら……あなたはこの世にいないかもしれないのよ……?そうなれば、私たちが!文菜が……どれほど悲しむと思ってるの!」


 千弦は悔しそうに唇を噛む。


 それは心からの心配だった。


「晴葵……熱もだけど、それ以外に何か考え事をしているよね。よければ教えてくれないかな。君がどうしてあの時、文菜を突き飛ばしたのか……普段の君なら絶対にしないことを。僕らは『仲間』だろ?」


 幸大が真剣な目で晴葵を見る。


 晴葵は少し黙ったあと。


「俺は……中学の時、いじめられてたんだ」


 ポツリポツリと話し出した。


 自分の過去、自分の『孤独』を。



 晴葵は昔から人と違った。


 良くいえば個性的、悪くいえば浮いていた。


 出る杭は打たれる。


 異端は敵である。


 特別は悪であった。


 そのため、勉強はよく出来たが、集団行動に馴染めない晴葵は(うと)まれる対象だった。


「こっち来んなよ」


「キモイ」


 今思えば、ただの周囲の嫉妬もあっただろう。


 特別に対する嫉妬。


 けれど、中学生がそれを理解するには許容量を超えていた。


 晴葵は不登校になり、自分の世界に閉じこもった。


 そして、何度か登校しては絶望する繰り返し。


 その内に、彼の心は壊れていった。

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