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73話 上の空

 そして、六人は現実世界の『ならふぁ』に戻ってくる。


「帰ってこれたねぇ」


 呑気に笑う晴葵。


「とりあえず考えることが山積みだけど、お腹も空いたね」


 幸大が照れたように言う。


「じゃあ食べてから帰りましょうか」


 千弦の提案で六人は昼食を食べて帰ることにした。



 そして、次の日。


 晴葵達は学校で授業を受けていた。


「やはり『デリートソード』は『デバッグソード』へと名前の変更をするでござるよ」


「今更するん?」


「でも正式な言葉の方がいいわよ」


 ギャイギャイと授業そっちのけで話し合う匡也達。


 晴葵はその様子をどこか上の空で聞いている。


 顔は少し赤い。


「晴葵先輩はどう思いますかー?」


「え?」


 小弓に声をかけられて我に返る。


「このまま『デリートソード』でいいか、『デバッグソード』に名称変更するか」


 幸大が説明してくれる。


「あ、あぁ……やっぱり、ちゃんと『デバッグソード』と呼んだ方がいいんじゃないかな?」


 慌てて笑顔で答える晴葵。


「晴葵先輩、どうしたんですか?ボーッとしてますよ?」


「放っておきなさい、文菜。どうせ、変態なことでも考えてるのよ」


 千弦が鋭い視線を向けてくる。


「あ、あはは……まあ、そんなところかな?」


「変態な事……こういう事とか?」


 文菜がむぎゅうと晴葵に抱きついてくる。


 晴葵はいつものように「いやぁ、いい抱かれ心地だねぇ」と返そうとする。


 その時。


『晴葵は気持ち悪いんだよ』


「うあっ!」


 晴葵は気づけば文菜を突き飛ばしていた。


 椅子からコケる文菜。


「晴葵先輩……?」


 文菜は驚いた様子で晴葵を見ている。


 幸大や匡也、千弦に小弓、クラス中の視線が晴葵に集まる。


「晴葵くん……どうかした?」


 女の先生がポカンと晴葵に声をかける。


「……あ、い、いや。なんでもないですよ。文菜、悪いね。大丈夫かい?」


 晴葵が慌てて文菜を引き起こす。


「晴葵先輩……」


「ごめんね。文菜みたいな美少女が急に抱きついてくるから、心臓が体当りしてしまった」


 意味不明な言い訳とともに笑う晴葵。


「ちょ、ちょっと、顔洗って来るよ」


 勢いよく教室から出ていく晴葵。


 その様子を『無敵の六人』メンバーは心配そうに見ていた。

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