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72話 その名は聖痕

「結論から言えば、無理ダナ」


「それはどうして?」


「サンピとコッパはウチらと違って『ボスへの忠誠心』を設定されてル。逆らうなんて考えを持ってネェし持たネェ。だから期待するだけ無駄ダゼ」


「なるほど。それじゃあの三体を倒さないと『ボス』とやらには届かないわけか」


 晴葵が呟く。


「いや、もう一人『側近』が居るんじゃなかったっけ?」


 幸大が口を挟む。


「あ、そーいえば、骨腕女ちゃん言ってたね」


 小弓が思い出したように頷く。


「そいつダ。そいつが一番の難関ダナ……」


「奴とは戦おうと思うな。俺達とは桁違いの強さだ」


「あなた達より強いの!?」


 ヘータの言葉に思わず千弦が声をあげる。


「その通り!吾輩達とは比べ物にならん強さを誇り!『ボス』に次ぐ決定権を持つ!」


 ショーがポーズを取りながら話す。


「ソノ名は『スティグマ』」


「スティグマ……」


 幸大が緊張したように呟く。


「まぁ、そのビックリするくらい強い人は置いといて……『生真面目女』と『獣紳士』を仲間に引き込むのは無理ってことだね」


「アァ、そういうコッタ」


 晴葵の言葉にサンが頷く。


「でも、どうして骨腕女達は『忠誠心』を設定されてないの?」

 文菜がサンに尋ねる。


「骨腕女……まァ、イイカ。ウチらは三人は元々『ボス』……『オメガ』の話し相手、遊び相手で作られたんだヨ。その後、『スティグマ』が現れてオメガの側近となり、ソイツの助言で戦闘タイプの『ディガンマ』や護衛の『サンピ』と『コッパ』が忠誠心のパラメーター付きで作られタ」


「話を聞く限り、やはりその『スティグマ』が怪しさMAXでござるな」


 匡也が全員を代表して口を開く。


「俺達もそう思う」


 ヘータが頷く。


「しかぁぁし!最近は誰一人としてスティグマを見たものはおらん!なぜなら奴は、オメガに次ぐ、この世界の決定権を渡された!そのため、奴もまたこの街から遥か離れた場所にいるのだ!」


「つまり、オメガもスティグマも直接会いに行けないん?」


 文菜がサンに尋ねる。


「そういうコッタ」


 サンが頷く。


 全員の沈黙を破ったのは晴葵だった。


「おっと、スマホが正常に戻ってるねぇ。この様子なら現実世界に帰れそうだ」


 スマホの画面を見て呟く。


「ナラ、ウチらのデータの一部をテメェのスマホに送っとク。そうすリャ、テメェらが元の世界に戻っても連絡や会話が出来ル」


「お、それはありがたいねぇ。だったら、千弦の方にお願いしようかな」


 晴葵が千弦の方を見る。


「え、わ、私……?」


「俺はパソコンやスマホに詳しくないからね。千弦や匡也の方がいいだろうから」


 そう言ってサンを見る晴葵。


「それでいいかい?」


「アァ、了解ダ」


 そして、サンが指を千弦のガラケーに当てる。


 すると、画面にサンの姿が現れる。


 同じようにヘータとショーも千弦のスマホにデータの一部を移す。


「せ、拙者にはなぜ来ないのでござる!?」


 同じプログラミング技術を持つ匡也が言う。


「……お前は危険そうだ」


「その通り!それにどうせなら女子の方がいいのは男として当たり前のこと!」


 ヘータとショーがそれぞれの意見を言う。


「サテ。んじゃ、また来るのを待ってるゼ」


「あぁ。こちらも色々用意してくるよ」


 晴葵の返事と共にサンが何もない空間に触れる。


 すると、警告音が鳴り響き、レンズには『ERROR』の文字が。


「これは……『エラー・プログラム』か」


 晴葵が驚いたように呟く。


「ウチらはバグデータの塊ダ。こんなもん楽勝なんだヨ。んじゃ、またナ」


 そして六人は現実世界へと戻っていった。

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