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71話 ネーミングセンス

 文菜がサンを晴葵から引き剥がし、一段落した頃。


「それで。話を聞くと、あの『生真面目女(きまじめおんな)』と『獣紳士(けものしんし)』も今の『ボス』とやらには疑問を抱いてるのかい?」


「『生真面目女』と『獣紳士』って、サンピとコッパの事カ?」


 骨腕女ことサンが晴葵に尋ねる。


「そう。これと思ったらそれに一直線。『ボス』の命令は絶対のサンピこと『生真面目女』と外見は大柄で筋肉質な獣、しかし『生真面目女』を優しく抱きとめる紳士なコッパこと『獣紳士』」


 晴葵が愉快そうに笑う。


「なんだ……俺達にあだ名を付けるのが流行っているのか……?」


 少し困った顔で晴葵に聞く、ロングマフラー男ことヘータ。


「全員まだいいではないか!吾輩なんて『ナルシストキング』だぞ!完全にバカにしてるだろ!」


 ナルシストキングことショーの叫びに、全員が横を向いて笑いを(こら)える。


「それは置いとくとして。聞いたことがなかったが、君達は何者なんだい?ただのデータ……という訳では無いんだろう?」


「ウチらはデータから作られた自我を持った存在。しかし、自我を持てても形はナイ。そこで『ボス』が目をつけたのがテメェらの作った『デュアルワールド』のシステムってわけダ。テメェらの作り上げたゲームはレンズである画面に軽いバグを強制的に起こす。そのバグをスライムやモンスターの形に形成してるダロ?さらに『デリートソード』っつーのは、いわゆる『デバッグ機能を持った映像の剣』ダ。バグに合わせて振ると接触部からデバッグが作用して、バグである敵があたかも斬られて消滅したかのように見えル。だから、『デュアルワールド』のシステムを利用してバグで体を形成されているウチらも『デリートソード』でダメージを受ける訳ダ」


「なるほどね。だから君達はメガネ越しじゃないと見えないし、『デュアルワールド』での敵モンスターの証拠である黒いパラメーターが表示されているのか」


 晴葵が納得したように頷く。


「アァ。そういうこっタ。けど、外見は『デュアルワールド』のシステムでもウチらの自我であるデータはゲームと別物ダカラ、斬られてもダメージは負っちまうがデバッグはされネーヨ」


 サンが愉快そうに笑う。


「けど、それなら『デリートソード』じゃなくて『デバッグソード』じゃないのー?」


 小弓が匡也に尋ねる。


「う、そ、それはそうなのだが……拙者、この『デリートソード』を作成した時、『デバッグ』か『デバック』かド忘れしてしまって……」


「あなた、プログラミングするくせにその程度もわからないの」


「だ、だから!ド忘れでござる!もちろん知っているなり!」


 千弦のツッコミに慌てふためく匡也。


「まあまあ。とにかく君達の正体や事情は理解したよ。次は『生真面目女』と『獣紳士』を味方に引き込めるかどうかだねぇ」


 晴葵が呑気に呟いた。

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