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67話 能ある鷹は爪を隠す

「確かにそうでござるな。奴らは敵。我々とは何の関係もないでござる」


 匡也が晴葵に同意する。


「ちょ、ちょっと匡也くん!」


 小弓が慌てて匡也を見る。


「匡也、アンタね!」


 文菜も混乱気味に匡也を睨む。


「……本当に関係ないのかしら?」


 サンピの試すような声が響く。


「あぁ関係ないさ。だから、その三人を痛めつけても無意味だよ」


 晴葵が言う。


 次に匡也。


「その通りである。なにせ世界転覆(せかいてんぷく)(くわだ)てておるのは、何を隠そう」


 そして、二人同時に。


「「我々だから」」


 ニヤリと笑う晴葵と匡也。


「なるほど。この三人が裏切り者かどうかは置いておくとして、今の言葉は問題ね……粛清する」


 勢いよく槍を構えて突っ込んでくるサンピ。


「みんな、構えろ!来るぞ!」


 そして、晴葵達がデリートソードを構えた瞬間、サンピが晴葵に激突する。


「ほう、私の槍を受け止めるとは。普通の人間の筋力(きんりょく)ではありえない」


「おや、人間の筋力をよく知ってるねぇ。他にこの世界に来た人間でもいるのかい?」


「我々は生きるデータ。会っていなくとも情報として入手している。ここはそういう世界だ」


「そうかい。んじゃわかっているだろう?ここは現実世界じゃない。常識の通用しない……世界だってね!」


 サンピに押されかけていた晴葵が槍を押し返す。


「なに!」


 体制を崩すサンピ。


「キョエエエエエエエエエ!秘技!『デリートソード』二刀流!聖光乱れ突きィィィィィィィィィィ」


 匡也が人間離れした脚力で跳躍し、落下しながら連続突きを放つ。


「くっ!」


 素早く弾いて(かわ)すサンピ。


「時に、サンピ。君は随分『ボス』とやらに信頼を置いているようだね」


 晴葵がニコニコと笑う。


「当たり前。『ボス』が絶対。ボスを裏切るような真似はしない」


 サンピは厳しい視線で晴葵を睨む。


「そうかいそうかい。いやね、君はあの三人を裏切り者と呼んで粛清しようとしているが……もし、彼らが裏切り者じゃなかった場合を考えたことがあるかい?」


「……何が言いたい」


「『ボス』は君たちを信頼しているんだろう。だから君たちも全力でボスを守っている。しかし、三人が本当は裏切っていなかった場合。仲間を傷つけて裏切り者と(ののし)った君を、その『ボス』が見たら……どう思うだろうねぇ」


 ニヤニヤと笑う晴葵。


 ここで幸大、文菜、小弓、千弦の四人は晴葵と匡也の作戦に気づいた。


 自分達が骨腕女のサン達と仲が良い事がバレれてしまえば三人は粛清される。


 しかし、『関係ない』『仲間ではない』と言うことで三人と自分達を切り離す。


 そうすることで、晴葵は三人を守ったのだ。


 自分たちに危険が及ぶから切り捨てたのではない。


 むしろ逆。


 自分たちが悪になることで、三人を守ったのだった。

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