63話 心の強い青
「役に立たない奴は『仲間』じゃないのかい?」
晴葵がポツリと尋ねる。
「そうよ!他のみんなは特化したものがある。けれど、私にはみんなより勝てるものがない……そうなれば捨てられてしまう……」
怯えるように震える千弦。
おそらく、そういう経験がるのだろう。
晴葵は震える千弦の肩を持って前を向かせる。
「千弦、君は大きな勘違いをしているねぇ。俺達は、少なくとも俺は『千弦のプログラミング技術』目当てに誘ったわけじゃないぞ」
「……え?」
晴葵を見る千弦。
「確かにプログラミング技術はすごいと思うが、それは二の次だ。俺が君を誘った理由はそんなことじゃない」
「なら何故……?」
千弦の質問に晴葵は少し黙ったあと。
「君が強いからさ」
「え?私が……?」
驚く千弦。
「そう、君の心が誰よりも強いからさ。『無敵の六人』。この中で、自分を犠牲にしてまで仲間のために一人戦い続けられる人物は千弦くらいさ。君は誰よりも強い。だから、俺らには君が必要だ。つらい時、凹んだ時、後押ししてくれる、励ましてくれる君が必要なんだ。もちろん、千弦が凹んだ時は、俺達が全力で励まさせてもらうよ」
呑気に笑う晴葵。
いつの間にか千弦の涙は止まっていた。
「で、でも……」
「俺達は役に立つ人物が欲しいんじゃない。何が出来るとか出来ないとかを抜きにして、一緒にバカして笑って歩いて行ける『仲間』が欲しいんだよ」
ニコッと笑う晴葵。
「……役に立たなくても……みんなより弱くなってしまっても……捨てないで。一人にしないで。もう……もう、孤独は十分よ……」
晴葵にしがみついて泣く千弦。
「もちろんだよ。それは『俺達』も一緒さ。孤独なんてもう十分だ。そうだろ?」
晴葵が屋上から室内に繋がる扉の方へと声をかける。
「え……?」
千弦が振り向くと、そこには四人の『仲間』達が立っていた。
「千弦先輩、水臭いですよ!」
「千弦ちゃん!私たちは『仲間』だよ!」
「千弦、無理しなくていいんだよ」
「千弦殿おおおおおお、拙者……拙者、千弦殿の限界にも気づかず……済まぬうううう!」
「な、なぜあなたが泣くのよ……」
困ったような、それでいて嬉しそうな表情を浮かべる千弦。
「千弦。『仲間』ならここにいるよ。何かが出来なくたって、役に立たなくたって。君に一緒に居てほしいと願う仲間はここにいるんだ」
そう言って笑う晴葵。
「……みんな、ありがとう」
ポツリと、しかし全員に聞こえる声で言う千弦。
「ようやく、俺達の『仲間』の千弦が帰ってきたね。おかえり」
冗談っぽく呟く晴葵。
「ただいま!」
そう言って笑った千弦の顔は、今までで一番輝いていた。
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