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62話 Find me !(私を見つけて)

 深夜。


 全員が寝静まった家、その屋上。


 心地よい風の吹く場所で千弦は一心不乱に、スマホで『デュアルワールド』のプログラミングを進めている。


 その目はどこか(うつ)ろで、その目はどこか悲しそうだ。


 ある種の狂気すら(はら)んでいる。


「私には……これしかないから……これがないと……私は……」


 そして彼女の瞳から一筋の涙が流れる。


 視界がどんどん(にじ)んでくる。


「もう!どうして溢れてくるのよ!画面が……見えないじゃない……」


 強引に(そで)で拭く千弦。


 そして再び睨みつけるようにスマホのプログラミング画面と向かい合った時。


「いい風だねぇ」


「え……」


 いつの間にか隣に晴葵が立っていた。


「晴葵……どうして……」


「いやね、女子部屋にお邪魔しようと思ったんだよ。けど、その前に屋上で身を清めてからだと思ってね」


 冗談っぽく笑う晴葵。


「……嘘つき」


 ()ねたように呟く千弦。


「お、嘘なんてついていないよ?」


 呑気に笑う晴葵。


 が、千弦は気づいている。


 確かに晴葵は変態だが、女子が無防備に寝ているところに入ってきたりはしない。


 女子が傷つくようなことは決してしない。


 千弦の疲れ具合を見て、心配してくれたのだろう。


「あなたは……卑怯(ひきょう)よ」


 ポツリと千弦は呟く。


「卑怯、か……確かにその通りかもしれないねぇ」


 どこか寂しそうな目で遠くを見る晴葵。


 千弦はその態度が気になったが、質問しても答えてはもらえないだろう。


「……それで。何かしら」


 千弦が無理やり強気な目で晴葵に尋ねる。


「自分の体の心配もせず、みんなのために必死になって追い込まれている『仲間』を助けにね」


 晴葵がしゃがんで、地面に座っている千弦と目線の高さを合わせる。


「……余計なお世話よ」


 千弦は逃げるように晴葵から視線を逸らす。


「やっぱり怖いかい?」


「何がかしら……」


「役に立たないと自分は居ちゃいけない。そんなことを考えているように見えるよ」


 晴葵の言葉に驚く千弦。


 そして拳を握りしめて叫ぶ。


「そうよ……その通りよ!私は文菜や小弓より可愛げもない!幸大より人に合わせることも出来ない!匡也より技術もない!晴葵みたいに……纏める力も優しさもない……なら……雑巾(ぞうきん)のようにボロボロになるまで自分の出来ることをやり続けるしかない!そうじゃないと、みんなの役に立てない!『仲間』である意味がない!」


 苦しそうに叫ぶ千弦。


 涙は止まることなく(あふ)れてくる。


 晴葵は千弦の悲痛な叫びを黙って聞いてる。


 そして、口を開いた。

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