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60話 対等に横一列

 そして夜。六人は各自の作業に取り掛かる。


 晴葵はエンジニアの二人に作り上げてほしい物を箇条書きで提案。


 文菜と小弓でそれを絵などでわかりやすくまとめる。


 匡也と千弦はスマホを使ってのプログラミング。


 幸大は全体の総括。


 実際は雑用係に近いが、それでも幸大はその雑用係が誇りだった。


 この特別ばかりが集まったチームで、作業の一端を任せてもらえることが嬉しかった。


 自分でもチームの役に立てるという事が幸せだった。


「じゃあ、文菜ちゃん。あとの作業任せていい?私、みんなの晩御飯作ってくるね」


「うん。ごめんね」


 文菜の隣に座っていた小弓が二階へ向かう。


「あ、僕も手伝うよ」


「あ、幸大先輩ありがとー!」


 階段を降りながら幸大は小弓に話しかける。


「にしても、晴葵達はすごいなぁ。なんていうか一丸となって頑張ってるよね。さすがは『無敵の六人』。僕なんてまだまだだなぁ……」


「幸大先輩、『無敵の六人』のメンバー言ってみてください」


「え?晴葵に匡也、千弦に文菜、小弓……で、ついでに僕だけど」


 幸大が言い終わると同時に二階へつく。


 振り返った小弓は少し不機嫌そうだった。


「『無敵の六人』は幸大先輩も入れて六人です。ついでなんかで晴葵先輩は『仲間』に入れません。通行の邪魔でも対等に横一列!これが私達ですよ?」


 幸大の顔をのぞき込む小弓。


 その顔は優しく、まるで子供をなだめるときのような顔だった。


「う、うん……」


「わかったらオッケーです!さぁ、おいしいご飯作りましょう!」


 小弓が元気よく誘うように「おー!」と手をあげる。


「お、おー!」


 幸大も小さく手をあげて、二人は夕食作りに取り掛かった。



「中々、時間のかかる作業ね」


 千弦が一度手を止めてため息を吐く。


「千弦殿よ、一度休まれよ。拙者はまだ平気が故、千弦殿の分も作業を進めておこう」


 匡也が顔をあげて千弦を気遣う。


「匡也……大丈夫よ。あと少しで晩御飯だもの。そこまでは頑張りましょう」


 再び入力を始める千弦。


「ふむ、無理はせぬようにな。千弦殿に倒れられてしまっては、晴葵も心配であろう」


「それはあなたでも同じでしょ」


「それもそうかもしれぬ」


 千弦と匡也は顔を見合わせて笑う。


 そうだ、晴葵なら飄々(ひょうひょう)としているように見えて、どちらが倒れても真っ先に心配してくれる。休めと怒ってくれる。だからこそ、晴葵に心配をかけるようなことは出来ない。そういう信頼関係で出来ているのだ。


 だからこそ、少し心配をかけたくなってしまう。甘えたくなってしまう。


「拙者、もう少し頑張れそうである」


「あら?奇遇ね、私もよ」


 匡也と千弦は打ち込みのスピードが少し軽快になるのを感じた。


「ご飯楽しみですね、晴葵先輩」


「そうだねぇ」


 文菜の声に晴葵は穏やかに頷いた。

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