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59話 流行に敏感

 相変わらず放課後になっても教室中の興味は晴葵の持ってきた六台のスマホだ。


「け、けれど本当にいいのかしら?こんな高価なもの……」


 千弦が申し訳なさそうに尋ねてくる。


「あぁ、俺の祖父に色々ツテがあってね。それに、『アイツら』に勝つにはガラケーじゃダメだ。パソコンと似たような機能を備えたスマホなら太刀打ちできるかもしれないだろ?」


 他の生徒もいるので直接的には言わないが、『アイツら』とは閉鎖空間でのデータ達のことだろう。


「けど……」


 再び口を開く千弦を晴葵の声が(さえぎ)る。


「それに。俺の知っている限り、これを最大限に生かせるようにカスタム出来るのは、『匡也』と『千弦』の二人だけだと思っている。俺の仲間の『匡也』や『千弦』は最高の技術者だからね」


「……わかったわ。私もしつこいのは嫌いだし。ここまで来ればやってやるわ。あなたが望む『最高』のスマホにしてやろうじゃない。私達に頼んでよかったと言わせてやるわ」


「ふっ、ついに千弦殿の背後より隠されていたサードアームが姿を現す時が来たようだ。負けていられん!拙者も気合いを充填せねば!フォオオオオオオオオオオオ!」


 千弦と匡也にも気合が入った所で晴葵は二人にカスタムを任せる。


 これまでのように、逐一(ちくいち)ガラケーとパソコンを繋いでプログラミング、そして、データをガラケーに送り、各自のガラケーにメールで送信せずとも、千弦と匡也が各自に役割分担を決めて、各自のスマホ一台でプログラミング、『アプリ』を使って送信すれば完了となる。


 簡単に言えば、ガラケーとパソコンを持ち運ばなくても、スマホ一台でほぼ同じ機能。となるため、屋外(閉鎖空間含む)でもプログラミングが出来るのだ。


「じゃあ、全員一旦帰ろうか」


 未だ所有者が少なく、珍しいスマホに群がる生徒達をなだめて晴葵が集合をかける。


 しかし、中々通してくれない。


 困り果てたその時。


「はいはい。みんな、それは晴葵くん達の私物です。壊したりしたら弁償できないでしょ?また、ちゃんと許可をとって触らせてもらいなさい」


 パンパンと手を叩いて女の先生が生徒達を落ち着かせる。


「ありがとう、助かったよ先生」


「ふふ。伊達に高校生相手にしてないわよ。それより晴葵くん」


「はい?」


「もしよければ……今度先生にも見せてくれないかしら?興味あるのよ、スマホ!」


 目を輝かせて頼んでくる女の先生。


「あはは、予約ってことですね。わかりました、今回の恩もありますし、お礼として最初の予約者に入れときます」


「ありがとう!嬉しいわ!」


 そう言って軽快に自分の席に戻る、女の先生。


 こうして晴葵達はやっと教室を出れたのだった。

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