58話 スマートフォン
そして、次の日。
六人が学校で授業を受け、昼休み。
「そういえば昨日、手間取っていた。と言ったけれど何をしていたのかしら」
匡也と『デュアルワールド』のプログラミングをしていた千弦が晴葵に尋ねる。
「おお、そうだった!新たな『デュアルワールド』の機体を持ってきたんだよ」
意気揚々と立ち上がってカバンを漁る晴葵。
「ほほう。新たな我々のメインウェポンとなる代物か。期待のボルテージがヒイイイイイイイイトアアアアアアップ!」
匡也が興奮気味に叫ぶ。
「楽しみだね!」
「ねー。各自の色ありますか!」
ワクワクした様子の小弓と質問してくる文菜。
「もちろんさ。安心したまえ」
文菜達が「やったー!」と喜ぶ。
「楽しみだ」
幸大も思わずニヤけてしまう。
確かに『閉鎖空間』での出来事は非常に怖かったが、新たな携帯機と聞けばいやがおうにも期待が高まる。
「ふふふ、それでは!全員、刮目せよ!」
晴葵がカバンから取り出した四角い携帯機。
それは……。
「「スマホ!!」」
五人が大声で叫んだせいで、教室中の視線が集まる。
それはそうだろう。
うるさいのももちろんあるが、現在スマホを持っている人物なんて限られている。
スマホはガラケーより料金が高く、まだまだスマホの普及率は低いのだ。
その中で六台も……。
「さらに、現在出ている中で最新モデルさ」
「ほ、本当にいいんですか?そんな高価なもの……」
文菜が両手で丁寧に白いスマホを受け取る。
「ありがとうございます!大事にします!」
敬礼して赤いスマホを受け取る小弓。
「おお、この重み。この大きさ。まさに最先端技術と呼ぶに相応しい!」
匡也が相変わらずの調子で受け取る。
「け、結構緊張するわね」
千弦は震える手でスマホを受け取る。
「そして、これが幸大のさ」
晴葵が緑色のスマホを渡してくる。
「ありがとう……あの、晴葵」
「ん?」
スマホを受け取った幸大が晴葵に尋ねる。
「昨日、晴葵がいないのに声が聞こえたんだ。僕を応援してくれる声。それって……」
幸大が聞こうと顔を上げると、晴葵が口に指を当て「しーっ」と合図する。
そして、教室の全員がスマホに夢中になっている中、晴葵は幸大にしか聞こえない声で言った。
「昨日、幸大はメガネをかけたままだったろ?俺のガラケーから幸大のメガネのスピーカーにかけたのさ」
「あ……」
なるほど。
晴葵がニコッと笑う。
それは呑気で誰よりも強く優しい、幸大の憧れの笑顔だった。
「やっぱり、晴葵はすごいや」
幸大はスマホを握りしめて、呟いたのだった。
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