39話 お待たせ
一方『ならふぁ』の端にまで来た晴葵達。
「この川がワープの場所だよ」
「これ地図です」
文菜が自身のガラケーで作った行動範囲地図を見せる。
「なるほどね。その地図、赤外線で送ってちょうだい」
文菜と千弦がガラケーを近づけて赤外線通信を行う。
「とりあえず、あのビルにいれば安全なはずさ。幸大と小弓は心配ないよ」
チラチラの家の方角を心配そうに見る文菜を晴葵は慰める。
「はい……置いてきちゃったから……心配で」
ぎゅっと手を握りしめる文菜。
晴葵の方も心配だが、置いてきた小弓達も心配する。
やはり彼女は誰よりも仲間思いだ。
「……さて。次は『ならふぁ』の屋上から観察してみましょうか」
千弦がスタスタと歩き出す。
「……千弦殿よ。お主、無理しておらんか?」
匡也がポツリと声をかける。
すると、立ち止まって黙る千弦。
「……のよ」
それは聞き取るのが難しいほど小声だった。
が、それはすぐに大声に変わる。
「せっかく出来た『仲間』なのよ!私を!仲間だなんてほざいた!大切な人達なの!最初は……このまま閉じ込められてもいいかと思った。そうすれば、ずっとあなた達と一緒にいれるから……けど、あなた達は不安そうだった、帰りたそうだった。なら、私は!」
振り返った千弦は泣いていた。
しかし、その顔は強い決意を秘めた顔だった。
「みんなと元の世界に帰る方法を探すわ。みんなを悲しませてまでこの世界に留まりたいなんて思わないもの。みんなで一緒に笑って、みんなで幸せに生活する。それが……あなたの言った『仲間』でしょ?」
涙目で晴葵に微笑む千弦。
「……あぁ。そうだね」
千弦に微笑み返す晴葵。
「だからこそ、千弦。君は一つ勘違いしてるね」
そう言って匡也を指さす晴葵。
そこには千弦と同じくらい泣いていて、真剣な目で彼女を見る匡也の姿があった。
「なら!なぜ、先に一人で行こうとしたのだ!なぜ!仲間を頼らんのだ!そんなに拙者達は頼りないか!なぜ……なぜ一緒に頑張ろうと言わんのだ!」
涙でぐしゃぐしゃの顔で匡也は千弦に叫ぶ。
千弦は驚いた顔をしたあと。
「……そうね。頼るべきだったわ。みんな……匡也……今からでも間に合うなら、私と一緒に帰る方法を探して。幸大と小弓も、みんなを連れて帰りたいの。そして、一緒にバカなことがしたいの……」
ポロポロと涙をこぼす千弦。
「もちろんだ!」
千弦に強く頷く匡也。
遠くを見ていた晴葵が穏やかに笑う。
「これで全員揃ったね」
「え?」
文菜が晴葵と同じほうを見ると、小弓の手を繋いでこちらに向かってくる幸大の姿。
「ま、待たせてごめん!」
「おまたせ!」
謝る幸大と小弓。
「さあ『無敵の六人』集合だ。必ずこの世界から脱出する。いいね!」
「「おー!」」
再び心は一つになった。
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