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36話 無敵の六人

 それから二日後。


 まだまだ七月の始めというのに真夏のような暑さだ。


 千弦の衣類などの一人暮らしセットも届けられ、六人はのんびりとした時間を過ごす。


「もうすぐ七夕だねー!」


 小弓が嬉しそうに話す。


「そういえばそうだね」


 幸大が思い出したようにカレンダーを見る。


「こりゃ、ムフフなイベントがあるねぇ」


 晴葵がいやらしくニヤける。


「何でもかんでもそっちに持っていくわね」


 千弦がため息を吐く。


「晴葵先輩は許されるんですー!」


 文菜が晴葵を(かば)う。


「ふっ、晴葵よ。その口ぶりだと何かイベントがあるようだな」


 晴葵と最も付き合いの長い匡也が勘づく。


「あぁ、もちろんさ。七夕は盛大に歓迎パーティーをしようと思うんだ」


「いいですねー!」


 小弓が「さんせーい!」と飛び跳ねる。


 相変わらずウサギだ。


「でも、織姫と彦星の歓迎会っておかしくないかしら?」


 千弦が不思議そうに首を傾げる。


「あぁ、失礼な話だが『七夕』というのはオマケに過ぎない。ちょうどイベントをしやすい日程度の問題さ」


「どういうことですか?」


 文菜がキョトンと聞いてくる。


「俺が本当にしたいのはそのうちわかるよ」


 ポンポンと文菜の頭に手を置く晴葵。


「さて、それじゃあ匡也と千弦が共同で作り上げてくれた新生『デュアルワールド』をプレイしようじゃないか」


 晴葵の掛け声で各自のガラケーを配っていく匡也と千弦。


「はいはーい!音楽は私が頑張っちゃいました!」


「私もキャラとかのイラスト頑張りましたよ!」


「そうだね。ありがとう」


 小弓と文菜を褒める晴葵。


「そして、幸大。君もお疲れ様」


「え、いや。僕は何も……」


「いやいや、何を言う。俺の企画書を文菜に運んで、絵にしてもらい、小弓の音楽ファイルを匡也と千弦に送る。全員を繋いだのは幸大だよ」


 みんながうんうんと頷く。


「みんな……」


 幸大の瞳に涙が滲む。


「ありがとう、幸大。さすがは『無敵の六人』だ」


「む、『最強の五人』はレベルアップいたしたか!」


「私が入ったのよ。『最強』どころでは足りないわね。『無敵』……気に入ったわ」


「無敵だったら、敵無しだね!」


「晴葵先輩、ネーミングセンスいい!」


「な?幸大」


「……あぁ!」


 晴葵の言葉に強く頷く幸大。


『無敵の六人』はここに誕生したのだ。

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