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35話 君がリーダーだ。

「これをお主に(たく)す」


 匡也が千弦に渡したのは『プロトタイプ』の青いガラケーだった。


「これは……ガラケー?あら、青色じゃない。素敵だけど……本当にもらってもいいのかしら」


 千弦の言葉に匡也が決めポーズで笑う。


「拙者を苦戦させるほどのプログラミング技術なら大丈夫だろう」


 匡也の言葉を聞きながらガラケーを開いた千弦があることに気づく。


「これ、改造してあるわね」


「ふっ、そこに気づくとは。さすがは千弦殿よ。その通り!そのガラケーは拙者と晴葵が共同で開発した新感覚ゲーム『デュアルワールド』の体験機である!」


「はいこれ。モニター用メガネ」


 匡也が決めポーズで言い放つ横から、晴葵が千弦に度なしメガネを渡す。


「へぇ……すごいわね」


「けど、いいのかい?『プロトタイプ』を渡してしまって」


 晴葵が匡也に尋ねる。


「クク、その点も抜かりはない。『プロトタイプ』はもう一台存在する!まさに幻のプロトタアアアアアイプ!」


 匡也が高らかに持ち上げたのは、彼自身の黄色いガラケーだった。


「おお、俺の知らぬ間に自分のもデータを受信するだけでなく、送信できる『プロトタイプ』に改造したのか。さすがだねぇ」


 晴葵がニヤリと匡也を見る。


「当たり前よ。拙者を誰だと思っている」


 褒めてもらえて、とても嬉しそうに決めポーズを取る匡也。


「すごいじゃないか、匡也!これで技術者が二人だ!」


 幸大も手を握りしめて喜ぶ。


「ふっ、ここに晴葵の無限大の企画を持つ頭脳が揃えば怖いものなしよ!」


 匡也がズババっとポーズを決める。


「みんなカッコイイよ!」


 小弓もぴょんぴょんと飛び跳ねる。


「いわゆる、俺がディレクターで企画担当。文菜が俺の企画を詳しく絵にしてくれるデザイナー。歌の得意な小弓がサウンド担当。匡也、千弦がそれを組み上げるプログラマーだね」


 晴葵がのんびりと話す。


「幸大先輩は?」


 小弓がキョトンと尋ねてくる。


「え、い、いや僕は得意なことなんてないし!特別なみんなと一緒に居れるだけでラッキーというか……あ、あれだよ。雑用係!」


 幸大が早口で話す。


「何言ってるんだい?幸大の担当なら決まっているよ」


 晴葵がのそのそと幸大の前に向き合うように立つ。


「変わり者の俺達を、その常識で纏めてくれる『プロデューサー』さ」


「え、い、いや僕はそんな……」


 慌てて否定しようとする幸大。


 しかし「そうだろ?」とにこやかに晴葵が笑う。


 自分を仲間に入れてくれた、自分を無条件に信じているその優しい目で。


「これは幸大にしかできないことさ。唯一の常識人である君じゃないとね」


 頷きながら話す晴葵。


「晴葵……僕が……プロデューサーなんかでいいのかな?地味で……根暗な僕が……」


 (うつむ)いて呟く幸大。


 晴葵の気持ちはとても嬉しい。


 慰めで言ってるのではない。


 本心で思ってくれている。


 だからこそ、自信がなかった。


 しかし。


「ふっ、晴葵め。拙者が言おうとしたことを先に言うとはな」


「美味しいところ、持っていきすぎですよ」


「幸大先輩がプロデューサーさんなんだね!」


「なら、私達のリーダーということね」


「り、リーダー!?」


 千弦の言葉に幸大が慌てる。


「まぁ、チーム自体のリーダーや纏め役は俺がするけどね」


 冗談っぽく晴葵が笑う。


「けど、『デュアルワールド』の作業に関しては幸大がプロデューサー、つまりリーダーだ。よろしく頼むよ」


 呑気に晴葵が言う。


 その顔はすっかり、適当な男に戻っていた。

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