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33話 六人目の青

 教室中が一瞬沈黙に包まれる。


「……もし拙者だとしたら、何か問題でも?」


 入力の手を止めて女子を見る匡也。


 しばし、睨み合う二人。


 周囲が緊張で見守る中、彼女が口を開いた。


「ええ!問題よ!私の天才的なプログロムを見事に解除して!さらにそっくりそのまま送り返してくるなんて!今まで一度もそんな相手いなかったわ!どんな手を使ったの!」


 先程までの冷静はどこへやら。


 かなり興奮&怒ったように尋ねてくる。


 怒ってると言っても、本気ではなく、ムキになっているレベルである。


「ふっ、決まっておろう。拙者には目に見えぬ腕があと四本あるのでな」


「出た、また厨二発言」


 文菜がすかさずツッコミを入れる。


「気にしないでください。こういう人ですから」


 女子に説明する幸大。


「なっ!まさか、あなた『スケルトンハンド』の使い手!?」


 こちらもかなり痛かった。


 面白そうに成り行きを眺める晴葵。


「ふっ、スケルトンハンドを極めるのも一興だが違うな。拙者の言った『目に見えぬ四本の腕』とは『仲間』の事なり」


 幸大や文菜が驚く。


「一人で対処出来ないことも、仲間となら超えられる。一人で戦うか、仲間と戦うか。その差ってことらしいよ」


 今まで黙っていた晴葵が女子の肩に手を置く。


「くっ……」


 悔しそうに唇を噛む女子。


 しかし、次の瞬間晴葵はとんでもないことを口にする。


「それにしても美しい肌だ。谷間も中々……どうだい?ウチのチームに入らないかい?」


「……え?」


 思わず呆然とする全員。


 そして。


「「えー!」」


 大絶叫が起こる。


「な、な、な、なんで入れるんですか!谷間ですか!谷間なら私の方がありますよ!」


 慌てて二つ目のシャツのボタンを開ける文菜。


「いやいや、落ち着きたまえ。確かに谷間もそうだが、彼女の技術は匡也に並ぶ。いや、一対一なら負けていたかもしれない。それほどだ」


 幸大はチラリと匡也を見る。


 てっきり「拙者は負けておらん!我が最強なり!」とか言うと思っていたら。


「なるほど。悔しいが拙者一人での作業はつらいものがあるのも確か。お主に手伝ってもらえれば効率はさらにアァァァァァップ!」


 決めポーズで叫ぶ匡也。


「わあ!新しい仲間だね!」


 小弓も嬉しそうに跳ねる。


「こういうわけだ。君がよければ入ってくれるとありがたい」


 晴葵が女子に手を差し出す。


 彼女はしばし晴葵を睨むように考えたあと。


「……千弦よ。高二の青六千弦(あおろく ちづる)。仕方ないから協力してあげるわ」


 顔を真っ赤にして、しかしどこか嬉しそうに、晴葵の手を握り返したのだった。

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