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31話 チェックメイトだ!

 目にも止まらぬ早さでキーボードを打ち続ける匡也。


「晴葵。そちらのモニター、方眼紙のような画面になっていると思う。そこに黒い点が現れる位置を教えて欲しい」


「了解」


 晴葵が頷くと、すぐさま匡也の画面がプログラミングの画面に変わる。


「縦軸が英語、横軸が数字で」


「承知した」


「Bの3」


 晴葵の言葉に合わせて高速で入力していく匡也。


「ちょ、君たち。闇雲に触るのは」


「はいはーい。先生、ちょーっと離れててくださいね。晴葵先輩の邪魔したら……怒りますよ?」


 笑顔で教師を脅す文菜。


「は、はい……」


 パソコン担当の先生は汗を流して頷いた。


「よし、そろそろ終わるでござるぞ……なに!」


 匡也が気を許しかけた途端。


 これまで左側のみに現れた、黒い点が右側にも現れたのだ。


「くそ!これでは……!」


 匡也が悔しそうに呟く。


「幸大!」


 晴葵が叫ぶ。


「え、な、なに……」


「君の出番だ。画面右側を頼みたい」


「む、無理だよ。そんな大事な役……」


「いや、君じゃないといけないんだ。時間がない。幸大」


 晴葵が真剣な目で呼びかける。


 今もこの向き合っているあいだにウイルスの侵食は進んでいる。


「……あぁ、わかったよ!」


 晴葵の横に座りパソコンを眺める幸大。


「横軸の4から6を頼むよ」


「わ、わかった!」


「頼むでござる!」


 そして、タイピングを再開する匡也。


 先生を抑える文菜。


 近づく生徒達を止める小弓。


 ウイルスの『隙間』を狙う晴葵と幸大。


 タイピングを進める匡也。


 五人が一心同体だった。


「よし、これで侵食出来る範囲はゼエエエエエエロオオオオオ。さぁ、自分の送ったウイルスで自滅するがいい!我ら五人にケンカを売ったのが貴様の間違いじゃああああい!」


「いけ!匡也!」


 晴葵が叫ぶ。


 そしてエンターボタンが押される。


 画面は……正常に戻った。


「「やったぁー!」」


 喜ぶ生徒達。


「す、すごい技術だ……」


 パソコンの先生も腰を抜かしていた。



 一方、その頃。


『フフフ、無駄ヨ』


「……くっ、何よ、これ!」


『フフフ、無駄ヨ』


 ウイルスの送り主の元へウイルスは送り返されていた。


 ザーという砂嵐音にノイズかかった電子音声。


「……いいわ、面白いじゃない。ここまでの技術を持つ者が『あの高校』に居るなんて。確かめてやろうじゃない」


 震えた声で、いざという時の『自作ウイルス自滅ソフト』を作動させる少女。


 パソコンは元の画面に戻る。


「私に技術でケンカを売ったこと……後悔させてあげる」

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