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29話 帰還、そして新たな謎

「そんな事が……」


 話を聞いた幸大が驚いたように呟く。


「懐かしいねぇ」


「うむ。つい昨日の事のようぞ」


 懐かしそうに笑う晴葵と匡也。


「でも、俺は『仲間』というのは時間の長さじゃないと思う。本当に大事なのは、どれだけ一緒にいるかより、どれだけ信頼しているかだと思う。だから、小弓も幸大も俺の大切な仲間だよ」


 ニッコリと笑う晴葵。


 その顔は、やはり呑気でお気楽そうだったが、四人にとっては自分たちを孤独の果てから救い出してくれた、リーダーの笑みだった。


「……よし、今日も元の世界に戻る方法を探そう!」


 幸大が元気よく立ち上がる。


「お、幸大やる気だねぇ。こりゃ負けてられないな」


 晴葵も立ち上がる。


「拙者も遅れをとるわけにはいかん!気合い……チャアアアアアアアジ!」


 絶叫する匡也。


「よーし、頑張っちゃいます!」


 バッと飛び跳ねる小弓。


「晴葵先輩。頑張りましょうね!」


 文菜が晴葵の顔を見て笑う。


「よし、全員。気合入れていこうか」


「「おー!」」


 呑気な晴葵の声に四人は大きく手を挙げた。


 その時。


 ビービーという警告音がどこからともなく聞こえてくる。


「な、何この音!」


「どこから……!」


 慌てる文菜と幸大。


「……携帯だねぇ」


 晴葵がのんびりとポケットから『デュアルワールド』用のガラケーを取り出す。


「む、なぜ起動したのだ。タイマー設定などはしておらんぞ!」


 匡也がガラケーを凝視して慌てる。


「どうやら、色々あったから電源をつけっぱなしでほったらかしていたみたいだね」


 そそくさとメガネをかける晴葵。


「ほら。メガネを覗いてごらん。『エラー』って表示されてる」


 晴葵の言葉に全員メガネを装着する。


「ホントだー!画面いっぱいに『エラー』って出てるね」


 小弓がメガネのスクリーンに表示された『ERROR』の文字を見て言う。


 そして。


 再び警告音が止まり、『ERROR』の文字も消えて、普通の度なしメガネに戻る。


「……お、収まった?」


 幸大が呟く。


「……みんな。外を見てごらん」


 すでにメガネを外した晴葵が窓際に立って外を見ている。


「どうしたんですか?」


 メガネを外して窓に近づく文菜。


 窓枠から外を見る。


「あ!」


 驚いたような声を出す文菜。


「どーしたのー?あ、人がいるよ!」


 小弓の言葉に、慌てて窓から外を見る匡也と幸大。


「戻ってる……帰ってこれたんだ……」


 へなへなとその場に座り込む幸大。


「よかったー!」


 ぴょんぴょんと跳ねる小弓。


「やったな、帰ってこれたぞ。我らの勝利だ晴葵!」


 匡也が晴葵の方を見ると、ガラケーとカレンダー、そして壁にある時計を見返している。


「どうかしたんですかー?」


 文菜が尋ねる。


「俺達はあの無人の世界にどれだけ居たっけ?」


「えっと、昨日の朝『対人戦』をして、『ERROR』の警告音が鳴って」


「それで誰も居ない場所に飛ばされて、お昼まで歩いて調べたんですよね」


「さらに夜に起き、夕食を食べて、深き眠りへと誘われたぞ」


「そして次の日の朝になって、再び警告音が鳴って気がつけば元の世界に帰ってきて今ってところかな」


 晴葵の質問に各自が答えて幸大が締めくくる。


「そう。そこだよ。俺たちは寝たんだ。夜を過ごした。なら、一日経ってるべきだ。しかし、今日の日付は」


 そう言ってガラケーを見せる晴葵。


 そこには、晴葵達が無人の世界へと飛ばされた日と同じ日付が表示されていた。

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