28話 君との出会い〜匡也編3〜
あのあと、晴葵は校長先生に呼び出しを食らって出ていった。
そして、みんながチラホラと帰っていく。
匡也も帰り支度をして校舎を出る。
すると、一階の女子トイレの前で聴診器をドアに当てて聞いている晴葵の姿を見つけた。
「ぬひょ!」
驚いて声を上げる匡也。
「しー!」
晴葵が慌てて匡也に静かにと促す。
「な、何をしておる……」
「見てわからないかい?聖域内の女性達の会話を聞いているのさ。こういうとことでは遠慮のない生々しい話が聞けるからね」
「な、なるほど……」
いそいそと靴を履き替える匡也。
「おかしいな……聞こえないぞ……クソっ、やっぱり適当な改造ではダメか」
ため息を吐く晴葵。
「か、改造?」
匡也がピクっと反応する。
「あぁ、自作でこういう改造にしたいと計画したんだが……技術力が足りなくてね」
「見せてもらっても良いか!」
「あぁ、これだよ」
尻ポケットから一枚の紙を渡す晴葵。
それは上部にこうしたいということが箇条書きで記されて、下部に設計図らしきものが描かれていた。
しかし、かなり適当だ。
「こんな設定では聞こえんのも無理はない。これならば、直接ドアに耳をつけた方が聞こえるであろう……」
「な、ホントかい?」
落ち込む晴葵。
「いわゆる聴診器型の集音器を作れば良いのであろう?」
「あぁ」
「ふむ……」
匡也は自身の背中のリュックから素早く工具を取り出し、テキパキと組み上げていく。
そして、ものの数分。
「出来たぞ!」
見た目はイヤホンのような物を渡す。
「ジャック側についている円盤は集音装置になっている」
「なるほど。ありがとう!」
さっそくドアに円盤を当てる晴葵。
「おぉ、これは……むほほ」
ニヤけた顔で中の会話を聞いている。
「で、では……拙者はこれで」
思わず熱くなってしまったと、慌ててその場をあとにしようとする匡也。
「あ、ちょっと」
晴葵に呼び止められる。
振り返った匡也に晴葵はイヤホンの片方を差し出していた。
「……一緒に聞いてかないか?相棒」
相棒。
口にするのは簡単だが、実際に心からこの言葉を使うことが出来る相手がいるだろうか。
友達がほしい。そんな当たり前の願いも忘れかけていた匡也。
いつの間にか彼は泣きながらイヤホンを受け取っていた。
「お、おい……やめてくれよ。女子トイレの前でドアに聴診器をつけながら号泣する男の絵はキツいぞ……」
冗談っぽく笑う晴葵。
「す、すまぬ……」
ビー!とすごい音で鼻をかむ匡也。
そのせいで女子がトイレのドアを開けてしまう。
「あ……」
しばし固まる晴葵&匡也と女子。
そして数秒後。
「きゃー!」
絶叫が校舎中に響き渡る。
「逃げるぞ、匡也!」
「え!しょ、承知!」
慌てて荷物を持って駅に走る二人。
晴葵と匡也は二人で笑いながら駆けていたのだった。
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