26話 君との出会い〜匡也編〜
そして、晴葵以外にとって地獄のテスト期間が終わり。
いつの間にか『友達』となった五人は親から何とか許可をもらい、こうしてルームシェアする『親友』となった。
「懐かしいねぇ」
思い出すように晴葵が呟く。
「ふっ、最初の幸大はまさに雨に打たれた捨て犬のような瞳であったな」
「え、そんなに!?」
匡也の言葉に慌てる幸大。
「そうですよー。ものすごく震えてましたよね!」
「こう考えると、私達みんな晴葵先輩に救われてますよね」
小弓が笑いながら言う。
「む、拙者は!?」
「アンタはオマケでしょ?」
「ぬおー!」
わざとらしく地面に膝をつく匡也。
笑う四人。
まるで、自分たちが現在閉じ込められているなんて忘れているかのようだ。
「そういえば、晴葵と匡也の出会いはどんなのだったの?」
幸大が笑って聞いてくる。
「あ、それ興味あります!」
「匡也はどっちでもいいけど、晴葵先輩の過去は超気になります!」
三人が身を乗り出して聞いてくる。
「ふふ、よかろう。拙者達の50年に渡る……」
「今、いくつや!」
文菜が匡也にツッコミを入れる。
「そうだねぇ。俺達が会ったのは文菜達の入学式の日」
「懐かしいな」
思い出すように、照れくさそうに笑う晴葵とカッコつけて笑う匡也。
「どっちから声をかけたの?」
「最初は晴葵であったな」
「そうだねぇ」
頷く晴葵。
「あれは、入学式の朝であった……」
高校入学式。
全員が少し緊張した顔で写真を撮ったり、先生に挨拶している中。
「ふっ、くだらん。大衆の思考は拙者には幼すぎる」
今と変わらぬ意味不明な決めポーズをした後、親から逃げて校舎へ入る匡也。
教室では数名の在校生と、胸に花をつけた新入生が集まっている。
「拙者!見参!今宵、この学びの巣窟に新たな旋風を巻き起こしに馳せ参じた!」
ビシィとポーズを決めて勢いよく教室に入る匡也。
新入生在校生が揃って距離を開ける。
「ふっ、やはり選ばれし者は理解されぬか」
決めポーズで呟く匡也。
ハッキリ言って期待などしていなかった。
元よりコミュニケーションの苦手で、独特の世界観を持つ、匡也は小さな頃から友人と呼べるものが少ない。
いや、居なかった。
そのため、小さな頃から一人で出来る物作りが好きだった。
そのおかげで、中学にして自作の高性能パソコンを作り上げる腕前になった。
だから、今回も、これからも、一人で孤高を歩むと思っていた。
孤独ではないと信じていた。
痛いほど強く拳を握りしめる。
こうすれば、周囲の差別的な目がマシに見えるから。
匡也が再び叫ぼうとしたその時。
「君、素敵な二の腕だね。写真を撮ってもいいかな?」
匡也の隣で女子の絶叫が響き渡り、何かをビンタする音が聞こえた。
慌てて振り向く匡也。
そこに立っていたのは。
「いてて、アグレッシブだねぇ。それもまたよし!」
変態全開でニヤつく男、黒一晴葵だった。
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