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22話 君との出会い〜小弓編4〜

「そんな遠くに行ってないと思うけど……」


 電車に乗られていたらおしまいだ。


 文菜は慌てて駅の方を見る。


「……今度こそ、しっかりとぶつかるんだ……」


 そう呟いて、文菜は学校に向かって走っていった。



 すっかり電気も落とされて暗くなった校舎。


 全員が帰ったようだ。


 先生も今はいない。


「どこ……!」


 キョロキョロと見回す文菜。


 しかし、小弓の姿はない。


 やはり、電車で帰ってしまったのだろうか。


 そう考えた時、文菜の耳にとても綺麗な歌声が聞こえてくる。


 優しくて、包み込むような声。


 ゲームなら歌で傷を癒せそうな。


 そんな声。


 それは駐車場の方からだった。


 歩いていく文菜。


 駐車場からこちらに背を向けて、線路の方に歌っている少女。


「小弓」


 文菜が声をかけるとビクッと肩を震わせて、歌が止まる。


「……文菜ちゃん」


 その目には涙が溜まっていた。


「あの……すごい、綺麗な声やね」


 文菜の言葉に小弓は答えない。


「めっちゃ上手で思わず聞き惚れちゃってたよ」


 あはは、と笑う文菜。


 小弓は下を向いたまま。


 つらい沈黙が続く。


 先に言葉を発したのは小弓だった。


「ご、ごめんなさい」


「え、なんで謝るの?」


「私の歌は……迷惑だから。人を危険な目に合わせちゃうから……だから……」


 そして、泣き出してしまう小弓。


 文菜は小弓に近づいて背中を撫でる。


「小弓、落ち着いてからでいい。私でよければ、どうしてか聞かせて」


 泣き続ける小弓に文菜はずっと寄り添っていた。



 昔。


 まだ、小弓が中学の頃。


 彼女は歌がとても大好きだった。


 親が褒めてくれて、友達が褒めてくれて、みんなが上手だねって笑ってくれた。


 小弓ちゃんの歌は元気が出るって。


 しかし、悲劇は突然訪れた。


「小弓ちゃんって、とっても綺麗な声!次これ歌って!」


 小弓と一緒に歩いていた友達が、小弓の歌に気を取られて飛んできた野球ボールにぶつかったのだ。


 大事には至らなかった。


 友達も自分の不注意だから気にしなくていい。


 そう言ってくれた。


 しかし、自分が歌っていなければこんなことは起こらなかった。


 小弓は、歌うことをやめてしまった。


「私が歌うと誰かが傷ついちゃう……」


 怖がるように震える小弓。


『怖い』、『恐怖』。それを文菜は知っている。


 自分と原因などは違うが、同じ『傷つく恐怖』を知っている。


 もし、自分の傷を(えぐ)ることで小弓が楽になる可能性があるなら。


「晴葵先輩……」


 あなたなら、きっとこうしますよね?


「小弓、あのね」


 文菜は大きく深呼吸してから話し始めた。

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