2話 君の為に
ここは、主要駅から徒歩10分の距離にある通信制の高校。
馬島学園高校の奈良キャンパス。
この高校は基本的に単位制なので、午前中の国語や数学といった必須科目をこなせば、午後は自由な時間である。
一応、午後も他の学校にはない特別な授業(小説の書き方であったり、マナー講座であったり)があるのだが、晴葵達は大抵教室の端で自由にしている。
今日は上手い具合に人が居ないので、堂々とのびのび出来る。
「ただいまー……って涼しい!」
幸大が驚いた顔で入ってくる。
「二階から見てたよ」
晴葵達が今居るこの校舎は二階建て。
隣にある『きもの専門学校』や『文化服飾専門学校』、『コンピューター専門学校』などを兼ね備えた永野学園が本校舎に近い存在である。
基本的にこちらの小さな二階建ての校舎が高校の授業塔である。
「クーラー直ってたの?」
「いやいや、買い物に行った幸大の為に必死で直していたんだよ。ね?」
晴葵がみんなに同意を求める。
「そうだぞ、幸大。晴葵はお主の為にお主と同じくらいの汗を流して修理をしていた」
「うんうん」
「幸大のためにー!ってね」
全員が晴葵に同意する。
「あ、それ嘘だよね。本当は直ってたんだろ!んで、僕にアイス買いに行かせるために使ってなかったんだ!」
「ドキ」
「ドキって自分で言う!?」
やや強めの口調で幸大が突っ込む。
「まぁまぁ、クーラーは直ったし、アイスは手に入ったし、よしとしようじゃないか」
晴葵がすでにアイスを食べ始めている女性陣と匡也に続いてバニラのアイスを開ける。
「ま、まぁそれもそうか」
幸大も納得してアイスを食べ始める。
「いやー、快適でござるな」
「涼しいねー」
「外出たくないー!」
いつの間にか靴下を脱いでいた文菜が、ジタバタと足をぶらつかせる。
「そうだねー、これは帰るのが億劫だ。なら、夜まで時間を潰せることでもしようか!」
バッと晴葵が両手を広げる。
「おぉ、ついにあの封印を解く時が来たのだな、晴葵!」
匡也も勢いよく立ち上がり、教室後ろにある『パンドラボックス』と書かれた匡也専用のダンボール箱を取り出してくる。
そして、呪文を唱え始める。
「封じられし魔の箱よ。その希望を残して」
「はい、どーん」
パカっと簡単に箱を開ける文菜。
「なに!呪文なしに箱を開けた!貴様、魔界の女王か!」
「はぁ?」
笑顔だがすごい目で匡也を睨む文菜。
「い、いえ。どうぞ、ご覧ください……」
怯えながら箱を差し出す匡也。
中から出てきたのは、六台の携帯電話だった。
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