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16話 君との出会い〜文菜編3〜

 その時。


「何してるんー?」


「ぬぴょ!」


 背後から声をかけられて飛び上がる匡也。


「おぉ、これは驚いた。文菜、ついてきたのか」


 あまり驚いていない晴葵の態度に文菜は少し残念そうだったが、すぐに匡也が隠している黒いゴミ袋に視線を移す。


「それなんですかー?」


「い、いや、これは……そう!魔王への供物だ。乙女が触れれば魂まで腐り落ちてしまうぞ」


 匡也が出来る限りの恐ろしいトーンで言う。


「で、本当は何ですか?」


 匡也の言葉を華麗にスルーして晴葵を見る文菜。


 犬の耳があればピョコピョコと動いていることだろう。


「あー……えっとね」


 晴葵が言葉に詰まっていると。


「文菜、ちょっと」


 校舎の方から文菜を呼ぶ数名のヤンキーっぽい女子。


「あ、すみません。ちょっと呼ばれたんで行ってきます」


 ニコッと笑って二人から離れていく文菜。


 女子達は文菜をつれて、駅の方へと歩いていく。


「助かったでござるな。フッ、拙者の迫真の演技の賜物(たまもの)よ」


 キランと歯を輝かせて笑う匡也。


「……匡也、『例の企画』頼んどいていいかい?」


 晴葵がポツリと言う。


「む。それは構わぬが……」


 匡也は晴葵を見上げたあと。


「なるほど。あぁ、構わぬ。行ってこい」


 黒いゴミ袋の中身を漁りながら頷く匡也。


「悪いな」


「フッ。我らの仲に遠慮など無用。追いかけてやれ」


 ヒラヒラと片手を振って「行け」と合図する匡也。


 そして、晴葵は女子達を追いかけて駆け出した。


「……文菜」


 彼女は晴葵達から離れる時。


 笑顔だった。


 しかし、それは悲しそうな笑顔。


 誰かに……助けて欲しい時の笑みだった。


 つらくて、泣きたいのに、泣き方がわからない。


 悲しいのに、助けを求めれない。


 そんな笑顔だった。


「……まったく。お主はどこまでイケメンになるつもりなのか」


 呆れたように、しかし、嬉しそうに匡也は一人呟く。


「……間に合えばいいんだけどね」


 走る速度を上げる晴葵。


 いつもの呑気な口調も、少しだけ真剣だ。


 晴葵は、こっそりと助けを発した文菜に向かって走っていった。

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