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5、ホムラの力

転生二日目。

俺はホムラを連れて王都に繰り出していた。


リベリオ王国の最大都市、王都・テラスリア。

王城を中心に広がる街は中世ヨーロッパの雰囲気を醸し出す。

有能な王と憲兵によって表向きの治安は比較的よく、他の街から移住してくる人も多いらしい。

しかしその実、王城から離れた街の隅っこには貧民街、スラムがあり、違法な取引なんかもそこでは行われている、まさにこの王都の裏の顔ともいえる場所である。


今俺たちがいるのは王城にもほど近い治安もいい場所なので、とても活気がある。

とりあえず今日の目的は三つ。

『ホムラのステータス確認』『俺の武器・防具の購入』『魔法習得の練習』だ。


ホムラのステータス確認については、これから行く『春一番』で飯でも食いながらやるとしよう。

パートナーの能力を理解しておくのは大切なことだろう。

宿屋から歩いて数分、昨日も世話になった食堂『春一番』に到着した。


「いらっしゃいませー……あ、お客さん! 約束通り来てくれたんですね!」

「おー、ハルちゃん。昨日ぶり。今日は朝飯食いに来たよ」

「朝はちょっとメニュー違うんでそこはご了承くださいねー」

「おーよ。期待してる」


昨日と同じ席にホムラと座ると、ハルちゃんがメニューを持ってきてくれた。

「何にしようか……あ、ホムラも気になるの好きに頼んでよ」

「え……ですが私は……」

ホムラがそう言いかけた瞬間、ホムラの腹の虫が鳴った。

……あれ? ホムラは食事は必要ないんじゃ……


ホムラの顔を見ると、顔を赤くしてプルプルと震えている。何この可愛い生き物。

「も、申し訳ありません……恐らく、『永従の誓い』の影響かと思います。

アルトの魔力で、魔力の塊であった私に肉体が形成されました。

その肉体を維持するために、普通の人間と同様に食事や睡眠が必要になったのでしょう」


「なるほど……じゃあ尚更飯は食わないとな。遠慮すんな。一応金はあるから」

「は、はい……申し訳ありません。ご迷惑を……」

「だーから、そうやって自分を低くすんのやめろって。

俺たちはパートナー……対等な関係だ。いや、戦闘力で言えば俺は雑魚なんだけどさ」

言ってて気づいたが、俺はこいつらを召喚して強制的に従えているだけで、実際誰かを従えられるような器じゃないんだよな、俺は。


「あ、ハルちゃーん、俺、コッコ卵の卵焼きとサラダのセットで」

「わ、私はベイウィードの揚げ包みでお願いします」

「はーい、少々お待ちくださいねー!!」

俺は馴染みのありそうな卵焼きというワードで判断したが、ベイウィードは全然わからん。

ウィード……雑草? 揚げ包みは分からんでもないが……


少しした後、料理が運ばれた瞬間、俺は驚いた。

俺の頼んだ料理はまんま卵焼きとサラダだったが、ホムラの料理はどう見ても……

「稲荷寿司……か?」

「はい、そのようです」

驚いたな……このような料理もあったとは。俺も今度頼もう。

しかし、狐っ娘に稲荷寿司とは……狙いすましたかのようにピッタリだな。


「「いただきます」」

俺とホムラは同時にそう言い、食事を始めた。

相変わらずいい顔して稲荷寿司を食ってるホムラに対して、俺は『解析スキャン』を行った。



♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦


名前:ホムラ


称号:狐火ノ巫女


解説:伝説の妖獣・キュウビに魅入られた、炎を自在に操る巫女。

限界を超えて熟達した剣技と炎を織り交ぜた攻撃は非常に鮮やかで、敵でさえも魅了する。


MP:93400/93400

攻撃:3570

防御:3420

魔法威力:5340

魔法耐性:4710


状態:永従の誓い


__保有普通スキル


・ 炎魔法・極…炎魔法の極致。その炎は万象を焼き尽くす。


・ 移動術・極…歩行術、走行術、武術スキルの極致。近距離戦において非常に有利な状況を作り出せる。


・ 剣術・覇…剣術を限界以上まで鍛えた証。その剣閃は斬られたことにさえ敵に気づかせない。


__保有特殊スキル


あやかしノ加護…妖魔の類に魅入られた者が持つ特殊スキル。

魔法威力・魔法耐性が飛躍的に上昇する。


・ 狐火ノ剣…鍛え上げた剣術と炎魔法を織り交ぜた独自の戦闘スタイル。

自身の武器に炎属性を付与させる。既に武器に属性が付与されていた場合、重複する。



♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦


はい、チート。

MPは劣るものの、ラティスともタイマン張れるんじゃないこの子……

魔法威力と魔法耐性も大概だけど、『剣術・覇』て。覇て。極が最高じゃなかったのかよ。


今まで自身のステータスや召喚した奴らの解析スキャン結果から見るに、『普通スキル』と『特殊スキル』の違いは、誰でも努力と才能次第で使用できるか否か、のようだ。

となると、『解析スキャン』持ちは俺以外にもいるが、『カード召喚』スキルは俺オリジナルのものってことだ。こりゃ、一層目立つわけにはいかなくなったな……


そしてこの事実から、俺でも魔法を使える可能性が出てきた。

何てったってMPだけは常人より遥かに高いのだから。

とはいえ、俺は魔法威力なんてゴミ同然なので、支援系魔法に傾倒するべきか?

第一、試したことはないが、恐らくカード召喚の能力で『呪文スペルカード』の効果も引き出せる。

それこそ、本来は相手に少しダメージを与える程度のカードでも大惨事になる可能性もある。

大量の隕石が落ちるイラストの『破壊の天涙ティアドロップス』ってカードとかな。


「「ごちそうさまでした」」

考え事をしながらも飯はちゃんと食っていた俺は5分もせずに完食し、ホムラも食い終わっていた。

「ハルちゃーん、お勘定」

「あっはい、小銀貨1枚と銅貨3枚です!」


小銀貨2枚を支払った俺に、銅貨7枚を手渡しながらハルちゃんがニヤニヤして言ってきた。

「ところで、昨日から思ってたんですけど……・お二人って恋仲なんですか?」

「ぶっ!?」

食後に頼んでいた水を思わず吹き出しそうになった。

ほら、ホムラも顔赤くして困ってるじゃないか。


「えーとな、彼女は仕事仲間というか、パートナーというか」

「…………」

あれ!? ホムラさん何でそんな露骨にムスッとしてんの!?

「えー、お二人、お似合いだと思いますけどねー?」

「どこの世界でも君くらいの歳の女の子はそういう話が好きなのね……」


しつこく迫ってくるハルちゃんを撒き『春一番』を後にした俺たちは、第二の目的である『武器・防具の購入』を果たすため、武具屋を訪れた。

「えーと……ここか?」

昨日ギルド職員についでに聞いていたおすすめの武具屋だということだ。

『ゴルドー武具店』……というらしい。


俺たちが店に入ると、俺たち以外人がいなかった。

客はもちろん、店の人間すらいないようだ。

「どうなってんだ……?」

「……とりあえず店内を回っていましょう。そのうち戻ってくるのでは?」

「そうだな」


暫く俺は店内に乱雑に置かれた武具を見て回った。

俺は剣の素人だが、『解析スキャン』を使えばある程度の良し悪しは分かる。

確かに、いい店のようだ。

解析スキャンの『状態』の欄が『良好』以上の物がほとんどだな。


「む……?」

とにかく解析スキャンしまくったが、雑に置かれた剣の一つに目が留まった。

一通り見た中で、唯一個体名というか、剣の名前があった。


♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦


名前:ファルシオン


状態:最良


解説:ゴルドー銘のショートソード。火属性の力を宿す。


♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦


「これが……この店で一番良いヤツかな?」

「へえ、兄ちゃん、良い目ェしてるね」

気づけば、いつの間にか背後に男性が立っていた。

灰色の髭を蓄えた顔に見合わない小さな体躯……

「ドワーフ……ですか?」

「おうよ。俺が店主のゴルドーだ」


「……で、その剣買うのかい?」

「ああ、そうですね……武器を扱うのは初めてですし、決めかねていたのですが」

「お、じゃあ丁度いい。そいつは使いやすいぞ」

ファルシオンを指さしてゴルドーが答える。


「でも……お高いんでしょう?」

「ふっ、安心しな。金貨1枚で売ってやるよ」

いや、金貨1枚でも10万円相当だから高いんだけどね?


「でも……この出来で金貨1枚は安くないですか?」

「ああ、安い。だが、それでいいんだ。

最近の冒険者は剣はすぐ折れるモンだから安ければ安いほどいいって奴が多くてな。

中々買い手がつかなんだ。この店で燻ってるよりはさっさと投げて使われる方が剣も幸せってもんよ」

なるほど。そういうもんか。


「じゃあ、これは買うとして……防具も買った方がいいのかな」

「お、兄さん結構金払いいいね? 見たとこ駆け出しだろ?」

「まあ、臨時収入がありましてね……」

俺は目をそらしながら呟いた。


「言うて俺人並みとはいえ、防具なんて付けたことないしな。

こう……チェストプレート程度のものがいいな」

「まあ、防具にはそこまで差はない。適当に選んでくれ」

「そうですか……じゃあこれで」


「まいど……って、ちょ、ちょっと待て!!」

適当に選んだチェストプレートメイルとファルシオンの代金を支払い店を出ようとしたところ、慌てた様子のゴルドーに止められた。

「そ、そこの嬢ちゃんの剣……少し見せてくれねぇか?」

「剣……というか刀ですが。ホムラ、良いか?」

「はい、アルトが良いのならそれで」


「こ、これは……すげぇ、すげぇぞこれァ!!」

ゴルドーがホムラから刀を受け取ると恭しく観察をはじめ、興奮した様子だった。

「素材の精錬がもはや芸術……しかもこんな強力な火属性まで付与されて……何より美しい!!」

何か気持ち悪い刃物オタクっぽくなったな。いや、元々か。

「『解析スキャン』」


♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦


名前:妖刀・ほむら


状態:神域


解説:伝説の妖獣・キュウビの尾が変化したという伝承を持つ妖刀。

ありとあらゆる武器の中でも最も強い火属性が付与されている。

刀自体に仮初の意思があり、下手に扱おうものならその人物を焼き切る。


♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦


やばっ。武器もチートやんけ。

ゴルドーに襲い掛かる様子はないから安心だが、おっそろしい刀だ。

……というかこれを御せるホムラもメチャクチャ強いってことだな。


「いやぁ、良いもん見た。職務意欲が湧くぜ!」

また来いよー、とゴルドーに見送られながら俺たちは武具店を後にした。

さて、次は魔法の模索だな。

身体強化魔法とかあったら是非とも覚えたいね。

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