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3、冒険者ギルド

「うわああぁぁ……!! すごいです! 馬車よりもずっと速い!」

「た、確かに……このペースなら一時間もせずに王都に着くだろう」

相乗り客が口々に感想を言う中、俺には心配事があった。

それは俺のステータス画面にあった、カード召喚スキルの説明書き。

ある程度・・・・時間が経ったら自動的にカード化する』だ。


今のところそういう兆しはなさそうだが、急にカード化して転落とかシャレにならない。

高層ビルから落ちて無事だった例はあっても、それは偶然に過ぎない。

いや、勿論落ちた先の環境……柔らかい土があるとかだけでも大分生存確率は上がる。

……分からないことを心配しても仕方がないな。とりあえず祈ろう。

God bless me……いや、us?


結果から言うと、俺の心配は杞憂に終わった。

王都の門が見えてきた辺りで俺たちはラティスから降りる。

パニックを避けるため、ある程度遠い場所からは歩かないといけない。


「よぉし、よくやったラティス。休んでてくれ」

俺がラティスをカード化すると、ラティスのカードにはRCリキャスト:2day とあった。

さすがは神鳥。強い分コスパは悪いということか。

視界の隅で俺のステータスを確認したが、MPは微塵も減っていない。

やはり召喚ではMPは使わない……となると、何に使うんだ?

「き、消えた……本当に貴殿が召喚したのだな……」

「ええ。まあ、コイツはあと二日ほど再召喚できないみたいですけどね」


俺がカードを見ながら言っているのに気付いたセレスが、話しかけてきた。

「アルトさん、そのお札は……?」

「お札? ああ、カードの事?

召喚はこのカードを介して行うんだよ。ほら」

俺がカードに描かれたラティスの絵を見せると、皆が興味を持ったのかのぞき込んでくる。


「これは……精巧な作りと材質の良さ、どれをとっても一級品ですな……」

「しかも、カードの中から膨大な魔力を感じます……」

「説明を求められても俺はできませんからね?」

それにしても、膨大な魔力を感じる、か……

召喚でMPを消費しないのは、カードが肩代わりしてくれているからなのかも……


王都へ向かう道中、俺はあることに気が付いた。

「あ、俺王都に行けたとしても一文無しじゃん」

そう、金がない。

ちょうど腹が減ったのに乗じて、これから金が必要になることに気づいたのだ。


「む……アルト殿、その点は心配はいらん。

我々の、セレス様の命を救ったのだ。国から報酬が出るだろう」

「あー……それはありがたいんですけど、それ受け取るのに時間かかるやつじゃないですか?

腹も減ってきたしすぐにまとまった金が欲しいんですよ。あっそうだ」

俺はこっそり試しにインベントリにぶち込んでおいた下級竜レッサードラゴンの死体を取り出した。

「コイツの素材が売れたりしませんか? どのくらいの価値か知りませんが」


下級竜レッサードラゴンの死体を見て、皆が固まってしまっていた。

「く、空間魔法!? しかもこの巨体が余裕で入るほどの容量だと!?」

「こんな空間魔法、宮廷魔術師でも使えませんよ!? 何者なんですかアルトさん!?」

あ……やっちゃった?


「驚いた……貴殿のような魔術師……いや召喚士といったか?

私は聞いたこともない。貴殿の能力ならば大陸中に名が轟いてもおかしくないだろうに」

「そ、それは勘弁ですね。静かに生きたいんですよ俺は」

「なんと謙虚な……元の国でも正体を隠して?」

「え、ええ。まあ、そういう感じで……」

俺は作り笑いで顔を引きつらせながら、しばらく架空の身の上話をしたのだった。


「おっと、そうでしたな。下級竜レッサードラゴンの素材は超高級品ですよ。

これを全部売り払うとなると、まとめて買い取れる場所はなかろう。

解体して、数回にわたって信用できる場所に売るべきだろう」

「信用できる場所、ですか?

でも俺、王都に行くの初めてなんですけど」

「おっと、そうだったな。

無難なのは冒険者ギルドだろう。冒険者登録はいるが、確実に適正価格で買い取ってくれる」


さて、王都でまず何をするかが決まったな。

冒険者ギルドの大まかな場所をキースさんが教えてくれたし、最悪人に聞けばたどり着く。

キースさんやセレスと話しながら一時間弱、俺たちは再び王都の門を目にした。

今度は遠くからではなく、目の前に巨大な門がそびえ立っている。


「……あっ、キ、キース様にセレス王女!? ど、どうぞお通りください!!」

門番として立っていた男がキースさんとセレスを見るなり、腰を低くして対応していた。

「うむ、門番ご苦労」

キース達に何気なく着いていこうとすると、

「おい、お前はダメだ。せめて名乗れ」

門番が俺の肩を掴んで引き留めた。


「やめてくれ。彼はアルト殿。我々を助けてくれた。

近々王城にも招くかもしれん人物だ。通してやってくれ」

「そ、それは失礼しました……ではお通りください」

門番はまだ俺を訝るように見ているが、キースさんがいて助かった。

「ありがとうごさいます、キースさん」

「なに、命を救われた借りはこの程度では返せまい」


その後、キースさん達は俺を冒険者ギルドまで届けてくれた。

道中の周囲からの視線が痛かったが、この人たちに悪気はないだろう。好意は素直に受け取ろう。

「なにからなにまで、感謝します。また、どこかで」

「ああ。近いうちに会えるかもしれないがな」

「アルトさん、本当にありがとうございました!!」

俺はキース達騎士、そしてセレスと握手をして別れた。周囲の視線が痛い痛い。

『あいつは何者だ!?』みたいな雰囲気をヒシヒシと感じるよ。


さて、冒険者ギルドの前に一人取り残されてしまったわけだが……

「むう、何かすんごい緊張するぞ……これ服装変じゃない? いや変だよな」

そう、緊張していた。ものすごく。

例えるなら面接前に別室で待機してるみたいな感じ。

しかも今の服装はこの世界にはない洋服。絶対悪目立ちする。

だけど服を買おうにも一文無しで、お金を手に入れるにはギルドに入らねばならない。

えーいままよ!!


俺が扉を開けてギルド内部に入ると、内部にいた人たちの視線がこちらに集まる。

「何だあいつ……見たことないな」

「ギルドに登録に来たんじゃないか? ヒョロそうだが、見た目じゃ判断できねえよ」

ああ、居心地悪い。


視線を無視して受付と思われる場所にスタスタと歩いていく。

「ああ、こんにちは! 本日はどの依頼を……って、初めましてですね?」

「ええ。冒険者登録をしに来ました」

「ああ、なるほど! では、こちらの用紙に記入をお願いします」

受付嬢が奥に入ったかと思うと、すぐに紙を手に戻ってきた。


用紙には名前と年齢、職業を書く欄があった。俺は手際よく欄を埋めていく。

「えーっと……アルトさん、20歳……召喚士、ですか」

「ええ」

大召喚士グランドサマナーとは書かなかった。騒がれたら困る。


「はい、ギルド登録完了です! こちらが冒険者である証です」

受付嬢は俺に、名前と『F』という字が書かれたカードを手渡した。

「では、改めまして、私は受付嬢のセリアです。ギルドの説明を致しますね!」


セリアが言うには、冒険者は依頼に基づいて採集や魔物の盗伐、調査任務、護衛といった、様々な仕事をこなす仕事で、冒険者にはF~Sまでのランクが与えられ、ランクが上がるにつれ危険な任務にも参加できるようになるそうだ。


「ランクを上げるにはどうすれば?」

「ある程度の実績が認められれば、カードの文字が変化しますので、それをギルドに報告していただければランクは上がりますよ」

「一定期間実績がなかったら登録解除とかは?」

「ひと月何の依頼も受けなければ自動的に登録は解除されます」

なるほど……大体理解した。


「それにしても……」

俺はギルドの建物内部をぐるりと見まわす。

「色んな種族がいるんですね……」

「はい! 人間族ヒュームが多いのは勿論ですが、妖精族エルフ獣人族ワービーストも数多く!」

彼らを見て、ある考えが浮かんだ。

「あの、もう一人登録してほしい人がいるんですが、構いませんか?」

「ええ、是非! こちらとしても、人手は多いに越したことはありませんから」

「そうですか。ちょっと待っててください」


俺はセリアのもとから離れ、ギルドを出て、人目につかない路地裏で召喚を行った。

「……『狐火の巫女・ホムラ』、召喚サモン

俺が唱えると、カードが光りながら変形し、目の前に少女の形をして降り立った。

「……召喚に応じ馳せ参じました、ホムラです。主様、どうかご命令を」


目の前に現れたのは、ところどころハネた短めの金髪と深紅色の瞳、そして狐の耳と尻尾を持った巫女服の刀を携えた美少女だった。ちょっと表情がキツめだが、それもまたいい。

ラグブレ界でもイラストアドが凄いと人気のカード、『狐火の巫女・ホムラ』だ。


「命令というか、そうだな……俺と冒険者として振舞ってもらいたい」

「承知しました、主様」

「う、うーん……その主様ってのやめない?」

「……では、何とお呼びすれば」

「普通にアルトでいいよ。様付けとか慣れてないの」

「……承知しました、我が主、アルト」


その後俺たちは冒険者ギルドに戻り、再び扉を開けた。

今度はさっきとはまた違う視線を感じた。俺にではなく、ホムラに対してだが。

「お、おい何だあの子……! めっちゃ可愛いじゃん……!」

「ああ……服装は変わってるが……あの衣装……良い!」

「ふっ……俺の変態的観測サイズスコープにかかれば彼女のスリーサイズも丸分かりさ……」

「「なにっ!? 教えろ! 金なら払う!!」

「まったく、男って……」

本当にまったくだ。てめぇ、さっき自分で言ったこと忘れんじゃねえぞ。

後で俺も聞きに行くからな。


すぐにギルド登録の手続きを済ませ、ホムラも冒険者カードを貰う。

物珍しそうに耳をピコピコさせながらカードを眺める様子は見ていて和む。

……さて、次はお待ちかねの換金タイムだ!!

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