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第7話:一休みの合間に

 リデルの答えを聞き、フィーネはアニエスがした質問の意図を察するが表情には出さなかった。


 アニエスも得られた回答に動じる事は無く、リデルに礼を述べる。


「それはすごいわね。教えてくれてどうもありがとう」


「どういたしまして。他に何かご用があればわたしはさっきのお家にいるのでお呼びください。もしいなくても族長とかその辺の誰かを捕まえて用を言って大丈夫ですから。それと……町の案内とかお二人のお話を聞きたいので、あとで少しお時間いただきたいんですが……」


「わかった。しばらくしたら声をかけに行くよ。いろいろありがとう、リデルちゃん」


「私達も調べものの相談をしたいから、その時はお願いするわね」


 二人の返答にリデルは笑顔で会釈してから族長がいた家へと戻った。


 先ほど族長から孫と言われていたが、彼女の自宅でもあるらしい。


「この星の時間の数え方ってボクたちの星と違うよね?」


「ええ。リデルの記憶を視た限り、約二十七時間が一日でそれを十の刻に割っているみたい。ただ、普段はみんな空模様で時間を判断しているからその辺りは大雑把よ」


「ふーん。それ、雨の日はどうしてるの?」


「みんな濡れるのが嫌だから、なるべく出かけない」


「平和な島だなぁ」


 アニエスとフィーネは案内された家屋の中に入り、備え付けられていた木製の椅子に腰かける。


 リデルが内心疑問に思っていた通り、二人には旅人らしい広げるような荷物は無い。


 それらは全て魔法で縮小して携帯しているため、必要に応じて取り出せるからだ。


 この星にやって来てからそれなりの距離を移動し、やや体力を消耗したアニエスは一息つく。


 友人が休まるのを待ってから、フィーネはいつもと変わらぬ調子で口を開いた。


「アニエス、この町は平気そう?」


「大丈夫。ルクスの帝都と比べたらどうって事はないから。この島の人の思念は割と静かだし」


 アニエスにとって大勢の人間ないし言葉の通じる生命が暮らす場所は精神に負担がかかる。


 その度合いは流れてくる思念の数は当然ながら、質によっても左右された。


 具体的には、周囲の人間の思考が荒んでいれば荒んでいるほど、騒音として不快に響き渡ってしまう。


 ここしばらくはフィーネ以外の他人と過ごしていなかったため、アニエス自身成長した己の異能がどのような反応を示すか若干懸念していたが問題は無さそうだった。


 それこそ人口がこの町の比ではない都市に滞在していた時期と比べれば、そよ風のようなものだ。


「この町、ちょっとだけエスティンに似てるよね。そんなに大きくないところとか、飼っている動物にヤギとかヒツジが多いところとか」


 星々を旅する以前、かつて二人が十年近く暮らしていた町の名を出すフィーネ。


 それに対するアニエスの反応は、懐かしむでもなく冷ややかなものだった。


「そうかしら。人の噂話が好きな下世話な田舎と一緒にしたらこの町に失礼よ」


「アニエスは本当にエスティンが嫌いだよね。一番長く住んでたのはあそこなのに」


「他に行くところが無かっただけ。フィーだって別にあの町にいい思い出とか無いでしょ」


 かつて暮らしていた町を疎ましいものと忌避するアニエス。


「うーん。ボクはそこまでイヤな思いもしてないからなぁ。それに、ほら――」


 それに対し、フィーネは思い出を大切に転がすように穏やかな声色で話す。


「町っていうか森だったけど。ボクがアニエスと会ったのはエスティンだし。だから、ボクにとっては大切な場所だよ」


「…………そ」


 裏表の無いフィーネの言葉に、アニエスは帽子を深く被った。

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