第23話:手を引かれ
体を洗い終えたアニエスが浅瀬に浸かっていると、派手な水音と共にフィーネが戻って来た。
「ふー、きもちよかった」
「遅かったわね。どこまで行ってたの?」
「島の外」
「えっ」
てっきり湖底に潜って上がって来ないだけだと思っていたアニエスは面食らう。
異能を含めて感知方面には長けたアニエスだが、様々な事情からフィーネに対しては能力が機能しづらい。
基本的に彼女が大きな魔力を使わない限りは五感でしか認識出来ず、湖に入った後のフィーネの動向は把握していなかった。
アニエスの動揺はさておき、フィーネは嬉々として発見したものの報告をする。
「底の方に水の通り道があってさ。この湖の水は海から引いてるみたいだよ」
「……頂上の近くからでも水を汲めるように造った人工湖って事ね。確かにこの地形でこの位置に湖があるのはおかしい気がしていたけど」
「頂上にいたっていう魔法使いが作ったんだろうね。どんな人だったのかな」
「それは明日調べればわかるからいい。それより……裸のまま外まで行ったの? まさか水から上がってないでしょうね?」
「そう言うと思って水道を通る前にちゃんと隠しておいたよ。ほら」
瞬時に、フィーネの体に胴の部分だけを覆う白いレオタードのような衣装が纏われる。
本人の魔力で編まれたこの衣は彼女にとって非常に重要な意味を持つものの素地なのだが、当人は気にせずバスローブ代わりに使用したらしい。
「これなら大丈夫でしょ?」
「…………」
「これ、ほとんど魔力を込めてないハリボテだから。この星に魔法使いがいたとしてもただの魔力の服にしか見えないから平気だよ」
「……そう。それは、よかったわ」
気力を失ったアニエスは、それ以上のコメントを控えた。
その沈黙を以て友人は納得したのだろうと、フィーネは魔法を解除して再び裸に戻る。
「そんなことより。この星の水は本当に綺麗だよね。アニエスもそんな浅いところにいないで向こうへ行こうよ」
「別に泳ぐ気は無いんだけど」
「ぷかぷか浮いてるだけでも気持ちいいから。ほらほら」
「ちょっと……引っ張らないでよ、フィー」
フィーネに手を引かれ、アニエスは湖の少し深いところに足を踏み入れた。




