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第20話:湖と魔女と御子

 転移魔法を使用したアニエスとフィーネは、一瞬で町の南西の方向にある湖に辿り着く。


 既に夜も更けており、当然ながら周囲に他の人影は無い。


「綺麗だね。水が澄んでる」


「水質はこの星ならではでしょうね。なぜかはわからないけど、魔力に満ちている」


「頂上を調べてわかるといいね」


「そうね。メモリーを解析して明らかにするんじゃ味気ないもの」


 転移魔法は一度の発動で往復出来るように組まれており、二人の足元にある陣でアニエスが再起動を促せば借りている家まで瞬時に戻れる。


 なお、行きで使った陣は消滅済みで、二人のいない部屋に薄明かりを放つ怪しいものが残されているわけではない。


 陣から離れたアニエスとフィーネは湖の畔を歩く。


 二人が見渡した限り水路の類は無い。町の中に井戸があるわけでもないので、島の住民達の生活水は全てここから徒歩で運んでいるようだ。


「島の人たちはここで体洗ってるの?」


「さっきも言った通り洗うというよりは泳ぐって感じだけど。今朝の水汲み当番だったリデルはそうしていたみたいよ」


「ふーん。じゃあ、ボクたちもそうしようか」


「水、冷たくないかしら……」


 アニエスは湖に手を浸す。水温は冷たくない程度で温かくはなかった。


 人間のアニエスとしてはもう少し温度がほしいところだ。


「結局洗うのは自分の魔法か……」


「もう時間も遅いし、ぱっと入ってぱっと出ちゃおうよ」


 そう言うなり、フィーネは結ばれていた髪を解く。


 金色の糸の束のようなそれらが、彼女の腿の辺りにまでふわりと広がった。


 それを見て、アニエスはぽつりとつぶやく。


「……明日はどう結おうかな」


「別になんでもいいけど。朝が早いし時間がかかるのはナシにしてね」


 ふと。長い髪を下ろし、服を脱ぎかけのフィーネが何かに気づいた。


「あ、ユニコーンだ。水を飲みにきたのかな」


「ぶち殺――……燃やしておきましょう。きっと島のためになるわ」


「いやいやダメでしょ。言い直しても物騒だし」


「でもあいつら、水を飲まずにこっち見てる。堂々と覗いてるわ」


「気にし過ぎ――って思ったけど、図鑑を読んだ後だとそれっぽくも見えるなぁ」


「壁作って、壁。私がやるよりフィーの方が早いでしょ」


「了解~」

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