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この物語はフィクションですか?   作者: アーモンド
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上巻 第2章6部 付き合うということ

上巻 第2章6部 付き合うということ


『次は町田~町田~』

揺れる車内。車掌のかすれた声が無機質に響く。

「町田さんね…証士はどんな人だと思う?」

「うーん…おおらかで良い人なんじゃないかな」

「えー?私は根暗な感じの人だと思うけどなー」

僕達は話すのに夢中になっていた。車窓から外を見ると、随分発展している駅だっ

たので、とりあえず町田駅で降りてみた。

二人で腕を絡めて街中を歩いていると、その辺を歩く人達よりも僕達はずっと幸

せな気がするし、なんだか誇らしい。


「わぁ、この水着可愛い!」

「試着すれば?」

「えー、なんか恥ずかしいなー」

強がってるのに恥ずかしがるところがなんとも言えない。

もうお好きにどうぞといった感じで僕は彼女を見つめた。

「じゃーん!どうかな?」

「うわ…可愛い。セクシーでキレイ。」

いきなり白と黒の水玉だったのでわかりやすく怯んだ。

しかし、そんなこと気に留めず、彼女は試着室に戻っていく。

「どーん!これなんかどうすかねぇ…」

落ち着いた色のフリフリした感じの水着。

相変わらず僕は怯みっぱなしだ。

「おぉー、これもすごい可愛い。」

褒め言葉のレパートリーが少ないのが悔しい。

今度図書館で「女性の褒め方」みたいな本を借りよう…。

その後も色んな水着を見ては稚拙な褒め言葉を並べたが、結局最初のを買った。

「これが一番反応良かったから。」

彼女はやはり鋭い。いや、僕がわかりやすいだけなのか?そんな事を考えながら

も、僕らは下の階の本屋さんに向かったが、僕が図書館で見るあの本は流石に置いていない。

しばらく彼女と別行動をした後、僕は彼女を探しに店内を

ウロウロ歩き回った。

「あっ、海…!」

彼女は目が合うと、手に取っていた一冊の本を隠すようにに棚にしまった。

「何見てたの?」

「ん?特に何も見てないよー。じゃあ、行こっか!」

そう言って僕は彼女に引っ張られて本屋さんを後にした。


『駆け込み乗車は…』

僕達はお昼を食べ、たくさん遊び、電車に駆け込んだ。

「お昼にスイーツはちょっと重かったかな…」

そう言うと彼女はお腹を擦りながら笑う。

「美味しかったからいいじゃん!今度デートする時は証士がランチ決めていいよ」

列車がトンネルに入り耳がモワーンとする。急に薄暗くなって驚いた。

「私、歌上手かったでしょ?」

車内の薄暗さはランチの後に行ったカラオケボックスを思わせた。


狭く暗い密室の中で美しく響く声。

彼女の歌声は歌詞が入ってこないくらい上手で、綺麗な歌声だった。最後まで完

璧に歌いきり、彼女は晴れ晴れとした笑顔を見せる。

「やばっ、めっちゃ上手いじゃん」


さっき本屋さんで女性の褒め方みたいな本買うべきだったな…

『次は柿生~柿生~』

「柿生くんかー、証士はどんな人だと思う?」

「イモ臭い人」

どうやら彼女はツボにハマったようで、ずっと笑っている。そんなに面白いかな…

「あっ、海!柿生だからさ、美味しい柿とかあるんじゃないかな!」

とにかく話を逸らそうと柿に話をズラしたつもりだが、我ながら雑な気がする。

「えっ?そうかなー」

「きっとある!降りてみようよ」

「あっ、引っ張らないで…」

ドアが閉まるギリギリで電車を降りたが、降りてから冷静に考えてみると今は柿が

旬の季節ではないことに気づいた。


次は4/21(日)です。

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