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この物語はフィクションですか?   作者: アーモンド
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上巻 第1章1部 物語

本作は大画面向けとなっています。

多少読みずらい所があるかも知れませんが、

よろしくお願いします。

この物語はフィクションですか?


上巻 第1章1部 物語




バタン。

本を大袈裟に閉じてみる。そして、幸せという余韻を目を閉じて味わう。

彼女(彼氏)がいない人は、これで日々やり過ごせるのではないかと本気で

思ってみたりもする。うん。なかなか面白かった。

恋愛経験がほぼ皆無な僕、桜木(さくらぎ) 証士(あかし)は海辺の工場(自動

車の部品作り)で月〜金曜日、毎日毎日おっさん達の中で働いている。

みんないい人だが、やはり男。というか、海の男のような熱気を出してい

て、今どきの若者を思いっきりひっくり返した雰囲気の、それはそれは

むさくるしい人達の中で、一人静かに働いている。

また、この会社はサッカーの社会人リーグに所属しており、土、日の

どちらかは試合、なければ練習…と、スポーツにも熱い。そのため、当然

忙しい僕は、彼女なんて作る暇も無く、(時間があったら出来るのか?)

土、日どちらかの貴重な休みを図書館で、甘い恋愛小説を読んで、気持ち

を満たしている。幸せな道をただ登る主人公には、多少の恨みを持つ事も

あるが、この恨みも最後の「おまけ」の文で一気に消されることになる。

「この物語はフィクションです。」

この一文が僕を一気に勝ち誇ったような気分にさせてくれる。そして心の中で

「よぉ、主人公。お前の花道は所詮フィクションだったな。」

と笑ってやるのだ。

確かに、甘い恋愛小説は大好きだ。ただ、甘すぎると僕の恨みメーターが

増えてくる。そして花道を飾った主人公に向かって………

ネチネチ言っているが結局は羨ましくて、くすぐったくて、自分のことじゃ

ないのに恥ずかしくなって…で、幸せな気持ちになる。ニヤニヤしていない

か心配になってしまうくらいだ。

閉じた本を本棚に返す。そしてそのまま知らない人と手を当たって…いや、こ

んな事は起きるわけがない。そもそも小説の中でしか、そんな事は起きない。

「ホーッ…」っと軽くため息をついて、僕は図書館の外に出た。まだ蕾の状態

の桜並木を、ポケットに手を突っ込んで、マフラーを巻いて、運命を祈りながら、

僕は家に帰る。明日はサッカーの試合があるのだ。あー、めんどくさいなぁ。

「フーッ」っと生暖かい風が吹く。



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