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プロローグ こうして違和感だらけの百合が始まる


ドラムロールとファンファーレが大音量で鳴り響き、気がついたら自分の部屋みたいな場所にいた。


でもおかしい、どう見ても体が浮いている。


「おっめでとうございまーす♪

人生ワンモアチャンス!」


「は?」


突然目の前に表れた妙にテンション高い女がそう言った。


長いブロンドの髪の毛に神秘的な服、それに周囲には羽根が舞っている。


まるでファンタジーものに出てきそうな女神のテンプレという感想が真っ先に浮かぶようなコテコテの見た目。


その割には妙に落ち着きがないが。



なんでこんなことになってるんだ。と思い返してみる。

今日はさっきまでいつものように夕飯を食べた後すぐにベットに入って…


「そうか、夢か。」

よっこいしょ。と寝る体勢に入る。


「ちょーっと!勝手に夢とか納得しないでもらえます?せっかく私が温情見せてあげようってのに、5000兆年に一回あるかないかレベルよ?」


「なんだその語彙力低そうな数字…

というかさ、人生ワンモアとか言われても死んだ覚えないんだけど…」


あちゃー、といったようなジェスチャーをとられる。

「はい、じゃあここで問題。貴女寝る前に何か忘れてない?」


「えーと…」


「はい終わり!正解はガスの元栓とスマホの充電つなげっぱなしと目覚ましセット忘れのトリプル役満!哀れ自宅は大炎上!貴女は18で大往生!year!」

いえーい、とハイタッチを要求してくる。

死因で韻踏まれてハイタッチするやつがいるかよ。


なんでこんなテンション高いんだこいつ…


「それ目覚ましは関係なくないか…って、それで死んだのか俺」


「だから女神の温情もとい抽選でもうワンチャンスあげるって言ってるんでしょうが!

ワンチャンだよワンチャン!

大学生の酸素でしょワンチャン!」


おいこら、全国の中におそらくあるであろう希少な人種に謝れ。

いや、いるのか?本当にワンチャン言ってない大学生いないかもしれない。


とはいえ、生き返れるといってもなぁ…


「うーん?表情が暗いぞ?」



自分が死んだ。と聞いた時にはショックがあったものの、いざそこまで生きたかったかと言われれば全肯定はできなかった。


何かをするでもなく、したいことがあるわけでもなく、ただ自堕落に暮らしているだけなら生き返ってもしかたないんじゃないか。

心の中でそう結論づけると…


「あーっと、心の中で感傷的になって結論出してるとこ悪いんだけども、

本音は生き返って私のために働いてもらうのが目的だから。

だから生き返るだけ無駄とか思うなら私の役に立つためとか思ってちょうだいって感じで!

拒否はできない感じだから!

マジで代役の探すのめんどくさいから!」


この女神自分中心な考え方してやがる。


仕事ってなんだ。霊界探偵とかするのか。



「仕事っていっても戦ったりとかそんな血生臭いものじゃないわよ。」


それに、と女神は続ける。

「これはあんまり使いたくない手ではあったんだけど…」


「うん?まだサービスがあるのか?」

これ以上なにか言われてもそう簡単には結論は変わらないぞ。

意思は固い方なんだ。


「詳しくは言えないけど、貴方が待っているあれとかあれとか、続編見たくない?そろそろやるよ?」


「⁉︎⁉︎‼︎⁉︎‼︎」


「麻雀のやつとか、あれのリピートとか、魔法少女のやつもあったね、はたまた休むことで有名なあれかもしれないし?」


前言撤回。


ずるい。

これだされて生き返りたくないわけがないだろう。


「現金だねぇ!

好きだよそういう人間!

欲望には忠実に!

まあ必要なことは後々伝えるから。

とりあえず生き返るって方針でいて、いろ、ハイ決定。ちょくちょく伝言しにも行くから。ハイ説明終わり!」


そういうと目の前に立ち、足でトントン、とステップを踏む女神。


「ちょっと手荒だけど我慢してね!いくよ‼︎」


「ん、何を…」


「ちぇやさーーー‼︎‼︎‼︎」


女神のローリングソバットを頭にモロに喰らって意識が刈り取られる。



「もうちょっと…なんか…あるだろ…」

それだけしか言えず、意識は混濁した。




「ん…」

寝てる場所が硬いし冷たい。床かなんかで寝てたのだろうか。


家はカーペット敷いてたはずだが…

とかそういうことは眠い時は意外と気がつかないもので。


あれ、どこだここ。

異様な空間が広がっていた。

あたり一面白塗りで、自分の手足なども見えない。


「気がついた?ちょっと重要なこと伝え忘れてたから転送中に話させてもらうわ。

あんまりこの状態で起きてるのは気分良くないとは思うけどまあ我慢してね。」


そう動いているかはわからないができるだけ首を縦に振るような動作をしようとする。


「じゃあ手短にいくよ!まずこの女の子を見てください!」


目の前に立体映像のように突然女の子が映し出される。


「どう?この娘?まあまあ可愛いでしょ?私の理想60%あなたの理想30%そして残り10%は愛とか平和とか優しさとか大人になったけどある日突然何の気なしに買った超久しぶりな駄菓子食べるとおいしいあの素朴だけど幸せな気持ちとかで出来てます!私が作りました!生産者の顔が見える!見ろ!」


後半はわけがわからない。

しかし、見た感想としては凄いの一言だった。

肩下まで伸びたサラッサラの黒髪ストレート、大きすぎずかといって小さすぎはしないBESTって感じの胸、手足は細身ながらある程度しっかりとしておりスタイルも申し分ない。

顔は少し目が鋭くきつめな印象を受けるがかなり高いレベルで整っている。

美しさを出しながら可愛い美少女を作り出すならば最適解といってもいいだろう。

まあまあなんてレベルじゃない。とてつもない美少女だ。


まさかこの美少女と一緒に異世界で冒険とかラブコメとかそういう夢みたいな第二の人生だろうか。


俺ツエー系が好きなわけではないがいざ自分がなるならそっちのが楽そうでいいなぁ、みたいな妄想が膨らむ。


「気に入ったみたいでよかったよかった!これから長いこと付き合っていくことになるしね!」



マジ?長いこと付き合ってくって言った?もう確定?最高すぎない?


「じゃあ生活慣れてきた頃に頃合い見つけてまた話しにくるから、2〜3日は適当に過ごしててっていうのでいいわね、

とりあえず最後に確認、この娘で大丈夫?」


首を縦に振ろうとする。

大丈夫どころか最高だ。

今ならなんでも許せそう、さっきのローリングソバットに文句つけてごめんなさい女神(?)様。


全く女神(?)も人が悪い。初めからこういうことがあるならすぐに引き受けたのに。とか思っていたら…


目の前が光に包まれ意識を失った。

先ほどの乱暴な蹴りとは違い、寝起きすぐあとの布団みたいな、安らかな落ち方だった。

ごめんなさいとはいったものの、

さっきもこうはできなかったのか。





…眩しい。

朝日が窓から顔に差し込み眼が覚める。

元々いた部屋とは全く違うがどうやら森の中とかで目覚めたわけではないらしい。

部屋を見渡すと全体的に白く小綺麗にまとめられていて、

タンスやテレビ、机やキッチンスペースなど一応一人暮らしに必要なものは揃っている。

といった感じの部屋だ。


ん?

さっきの娘が壁の一部の空いているところからこっちを覗いている。


まさか同棲してるとは思わなかったが向こうの表情は嫌悪感を感じているようには見えない、よかった。


こんなところに窓、しかも向こうの部屋につながっているとは変な造りの部屋だな、

とは思ったものの元いた世界のまま生き返ったわけではないのかもしれないし。

まあこれが常識の所なのかもしれない。


新しい環境に慣れるには今までの知識はいくらか邪魔になるだろう。

心機一転、1からの気持ちで。


まあ、なにはともあれ第一印象が大切だ。

とりあえず挨拶しよう。

初対面の知らない男にジロジロ見られるのもあれだろうし…


「お、おはよう!」

自分から出る声に違和感を感じた。結構声が高い。生き返ったときに少年にでもなったのだろうか。


「名探偵になることになったりして、でもあれは元々名探偵が小さくなるだけだけども…」


と、身体を見ようと目線を下ろしたその瞬間…

明らかな異変に気付く

今までなら下を見たとき真っ先にくるのは自分のお腹だったはずだ。


しかし今自分の目の前にあるのは着ている服の襟の部分、もっと言えばその生地の下の部位に膨らみがある。


さらに言えば手足も明らかに細く白くなっているし、髪の毛もやけに長い、ロングといっても差し支えないぐらいだ。



脳が一瞬フリーズする。

30秒くらいはポカンとしてたんじゃないだろうか。


うーん…

なんだろう。ロングヘアーが似合う美少年にでもなったのか?

あまりにもイメージが違いすぎる。

これで顔がカッコ良くなかったら悲惨だぞ。


「ちょっと待て、鏡ないの鏡」

身体を確認しようとタンスをあけ机を動かして鏡を探しーー


ん?さっきは窓かとおもってたあれ、よく見たらタンスと机今動かした通りに動いてるな?


なんだ、これ鏡か。

そっかそっか、確かに俺が動いた通りに動くわ。


ーーーあの美少女が。



ふぅ、と呼吸を一回。


その後吸えるだけ思いっきり空気を吸ってできるだけの大声で叫んだ。

「キャラメイクパートならちゃんと言えよクソ女神ィ‼︎」


透き通ったアルトボイスで、暴言が部屋中に響き渡った。


「どうなってんだこれ…うわ、手とか脚とかめっちゃ柔らかい…」


少なくとも余計な肉がついているようには見えないにも関わらずめちゃくちゃ柔らかい。一日中でも触っていられそうだ。


胸も触ってみたい…とは思ったが軽く髪の毛が触れてるだけでもちょっとぴりぴりする。

おそらく今までなかった部位に対して脳が対応できてないんだろう。


慣れるまでは我慢したほうがよさそうだ。


「よし、まずはここがどこで、自分が誰なのか…かな。」


ショックの割には落ち着いている。まあ美少女になりたいと思ったことが一度もないというわけではないし。

異世界でオークとかそういうのに比べれば遥かにマシだろう。


テーブンの上にスマホがあった。

流石文明の利器、全能とはスマホのためにある言葉なのではないか。


うーんと、なんだこれ。

使い方がわからん。

こんな機種見たことないぞ。

ボタンが全くないしかなり薄い。


「あ、画面ついた」


その画面にはこうあった。


2021

5/16 8:23


「2021年…?未来なのか…?」


近未来SFにしては微妙な未来だ。

確かに家財や家電製品にそこまでの大きな変化は見られない。


ん?電話がかかってきた。

電話の応答の仕方は同じみたいだ。


「も、もしもし?」

電話を通すと声も女の子になっている事実を再確認する。


「おっはー!いつでもどこでも帰りたいから明日来ないでほしいまで見守る女神様だよー!」


やっぱり女神だったのか。

1日の始まりと終わりを絶望にするのはやめろ。


「お姉さん、今どんな下着穿いてるの…?」


「お前が用意した通りだよ!

質問したいのはこっちなんだからボケ倒すのやめろ!」


「あー、その身体のことね。まあ理由があるからさ、そんな怒んないで。美人が台無しだよ?」


美人とか褒められてもちっとも嬉しくな…

いや、ちょっと嬉しいなこれ

気をつけないと顔が赤くなりそうだ。


「理由ってなんだよ。美少女にならないといけない理由とか、男の相手しなきゃいけないみたいなのは御免だぞ。」


「あー…遠いけどある意味近い。簡単に言うとね、その身体で女の子の相手をしてもらいます。

理由を話すとここから長くなるけどいい?ハイテンポで進めたかったんだけども」


「うーん話が見えてこないけど。まあいいや、最後まで聞かせて。」


「2072年にはね、全人類を美少女、美女化する技術と、同性でも子供が産める時代が来る…はずだったの。

私百合とか大好きだし、天界の皆も清らかな女の子とか処女懐胎とか大好きだし、その方向で人類を進ませて行こうと思ったんだけど。


美少女百合世界の作成に反対した人たちのうち、男同士が好きな人たちは自分たちの自治区を作る。ってことで条約締結して、

そしてある一部の反抗勢力が残り、それとの戦いが100年くらい続くの。」


「一部の反抗勢力ってのは…?」


「寝取りたいとか百合の間にはさまりたいとかそういうゴミとウジ虫と産業廃棄物を廃油で煮詰めたようなクズ野郎たちよ。

私が一回滅ぼそうとしたんだけど大量殺戮はしちゃいけないらしくてね。

で、その戦い起こさずにどうにか百合世界にできないかなーって思ったら、ある特定の人物たちを積極的に参加させることで戦争を短縮、うまくいけば未然に防ぐことができる。ってでてね。それでお願いするってこと。」


「話は理解できたけど。それで俺がどうして女の子の相手するんだよ。」


話の規模がデカすぎて困惑するが、大筋はわかる。


「百合のために積極的に参加させるってことはその人物たちを百合に導くってこと。その人たちの初恋相手を美少女にしなきゃいけないから、その初恋相手になってもらおう…って訳。どう?わかった?」


「やることはわかったけど、なんで俺なんだ?精神面は男より女のほうがいいだろうし、そもそも中身が男じゃ百合とは言えないだろ?」


「まずひとつには、同性の身体を作り出せない決まりがあるの。決まりというか、天界で女の子用に美少女の身体作って!っていっても元でいいだろ。って返されて予算がでないのよね。

つまり美少女を働かせたいなら死んだ美少女生き返らせるか男生き返らせて美少女にするかって話になってくるわけ。

そこに悪人でもなく、敵勢力にも寝返りにくく、なおかつ死因が温情に値する可哀想な死因…って検索して、理想の美少女像が私の想像と一番近い人間があなただったってわけ。これがあなたが選ばれた理由。


あとは中身が男だと百合にならないってことについてね。

これは確かにこの仕事するにあたってめちゃくちゃ話し合う議題にもなったんだけど。

しょうがない。って結論になったの。

そもそも百合世界の作成過程でTS少女の中身男問題は付いてくるものだから、

そのためのサンプルとしても機能するからしょうがないだろってね。


それに私は、生まれた性別が男であろうとTSした娘が内外ともに女の子に染まり百合に辿り着くのは不可能じゃないって思うの。

人間の可能性ってやつ?

人間の汚いところばっかり見させられたからね。今度はって、信じてみたいじゃん!


どう?これで納得できた?」


なるほど、確かに筋は通っている。

完璧な作戦にみえる。


…そう、ただ一点、俺が女の子と交流したことがほとんどないという点を除いては。

この女神そこのとこわかってんのかな。


「まあとりあえず作戦開始は2日後に設定してるから、落ち着くまでゆっくりするといいよ。

女の子になったらやりたかったこととか、女の子の楽しみを満喫するといい。

もしかしたら明日には戻りたくないと思ってるかもね!」


嫌な笑みを浮かべながらそう話す女神

そんなことあるわけないだろ。


色々な不安と疑問点を残しながらも、俺の二回目の人生、美少女の身体で転生なのかよくわからない状態での新しい生活、その1日目が幕を開けた。


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