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Tridelta Online ー奇弾の射手ー  作者: ナトリウム
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第85話 新たな代行者



「……えっ」


「……ん? なんだ?」


 本来ならばHPが0になった場合、プレイヤーは泡となって消滅する、それは号令系法術で呼び寄せたモンスターとて同様であった。


「どういうことだ……っ」


 しかし、リンがトドメをさした謎の鎧武者は泡とならず、ゆっくりと霧状になって散り───。


「あれって……」


 ───そして、何故かその場には一振りの刀剣が残されていた。











『おい! そこのチーター犯罪者共に告ぐー!!お前らは包囲されているー!! 大人しく投降しろー!!』


 キョウ達がその刀を凝視するのも束の間、また闘技場出入り口付近から新たな人物が姿を現す。


「くっ、次から次へと……っ、今度は───」


 視線を反射的に滑らせ、キョウはその人物を睨んだ。


「───なっ!? あの人は……っ!?」


 そしてすぐさま気づく、そのスーツ姿の男には見覚えがある。


「ど、どうしたの!? 知り合い?」


 集会所で偶然出会ったクラミツと名乗る運営側のプレイヤー。


「はい、間違いありません! あの人も代行者です! それも……っ」






『……って、聞くわけねぇわな』


「代行者としての序列は四位。確実に強者です……っ」






 キョウは危険視する様に神妙な面持おももちで語った。


「ふぅーん……」


 それを踏まえ、リンは少々考え込み。


「それならちょうどいいね」


 あっけらかんとそう言った。


「……えっ」


 キョウの訝しむ声に、しかしリンは答えない。


『……うおっ!?』


 何故なら『言った』瞬間には次の行動に移っていたからだ。











「じゃあ、あなたを基準にします」


『いきなり来やがったっ!? 怖ッ!!』


 飛翔する漆黒の翼。駆け上るが如くリンはクラミツに急接近する。クラミツはというと慌てて手に持ったメガホンを放り投げた。


「“怨嗟の鎗”ッ!!」


「やべッ───」


 “怨嗟の鎗(インペイル・グラッジ)”。リンの持つ黒翼、正式名称『倶に不ず天(ヘイトレッド)は戴かず(・フェザー)』でのみ発動可能な法術であり、先に葬った鎧武者に使用した翼で螺旋状のやりを形成する技法である。


(敵がどの程度か、これではっきりするッ!)


 リンは躊躇ためらいなく四本の鎗をクラミツ目掛けて突き刺した。


「───ぐへッ!?」


 ブシャッ! とクラミツから水飛沫が上がる音が響く。


(……あれ? 今何か変な……)


 クラミツの身体に深々と突き刺さる翼の鎗。初め、リンはクラミツが水属性の法術で防ごうとして失敗したのだと思った。











「おぉー、マジかこれ……」


「……っ!?」


 リンは息を呑む。何故ならその判断は誤りであったからだ。











「衝撃が吸収しきれねぇ……。どんな威力だよ、それ」


 シニカルな笑み。クラミツの身体がまるで液体の様に鎗を飲み込んでいたのだ。


(なっ……!?)


 動揺しながらもリンは咄嗟に距離を取る。


「あ〜、面倒くせぇな」


 クラミツは構わず、浮遊しているリンに向かって跳ね、接近した。


「オラァッ!!」


「くっ……!」


 殴り掛かるクラミツ。だが、リンもクロスカウンターの要領でクラミツの顔面に拳を突き立てた。


「うぇっ!?」


 バシャンッ! とまたも盛大に水飛沫が上がる。結果クラミツの攻撃は当たらず、逆にリンの一撃は綺麗に決まった。


「……おいコラお嬢ちゃん、なんだその腕力」


 関心よりも呆れが前に出たニュアンス。


「……っ!? な、なんで……っ」


 クラミツの顔面は一瞬ほど形を崩したが、直ぐに元の造形に戻った。明らかに無傷である。


「言っとくが、ダメージが無い訳じゃねぇぞ」


 着地しながらのその口振りは、しかし余裕の表れの様だった。


(キュネールでも見たことがない、トライデルタでも聞いたことがない。ということは……)


 リンは一つの結論に至った。


「……そんな顔すんなって。お前もどうせ使ってんだろ?」


 なんでもありの規格外系統。


「つーか、俺の勘だが、その羽はチートなんかの産物じゃねぇな」


 リンは驕ってなどいなかったが、どこかで油断があったのは事実である。


「概念系。……そうだろ?」


「……っ」


 概念系、それは抗うための力。


「図星か。つまりそれはお前の信念って訳だな」


 相対する概念系の衝突は、両者の信念のぶつかり合いでもある。


「悪いが仕事なんだ、否定させてもらうぜ。その信念」


 譲れないならば示すのみ。己の意志を貫く、これはそういう戦いでもあったのだ。




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