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Tridelta Online ー奇弾の射手ー  作者: ナトリウム
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第39話 放課後(チーム戦後)

 


「本ッッ当腹立つ! あんな醜態晒すなんてっ!」


 チーム戦を終え、仮想空間を脱出した京輔達は教室に戻り、放課後を迎えていた。











「そ、そこまで悔しがらなくてもいいと思うよ?」


「もう済んだことでしょう? 後の祭りとはこのことよね」


 本来ならば部活組はすぐに教室を出ていくのだが、今日こんにちに至っては緊急の職員会議があり、ほとんどの部活が活動禁止となっているため、春奏や祭里は教室に留まっていた。


「へぇ〜、そういうこと言っちゃうんだ。誰のせいであーなったと思ってるのよ」


「うっ、う〜ん、誰かしらね〜……」


「ごめん。僕も手段は選ぶべきだったと思う……」


「いや、政平は謝らなくていいって」


 教室に残り、何をしているかと問えば、答えは先ほどまで行っていたチーム戦についての雑談。


「まあまあ、そんなカッカしなさんな。観戦室で見てたけど悪くない戦いだったじゃねぇか」


 祭里の苛立ちを、大和は率直な感想を述べて収めようとする。


「はあ? 一番最初に退場した奴が何目線で語ってんのよ。ていうか、あんたはさっさと全員分買ってきなさい」


「はっはっは。やれやれ、自分で助け船ぶっ壊すとは恐れ入ったぜ」


 二番目はお前だろうがっ! と大和は思ったが、その言葉をぶつける事は控え、しぶしぶ祭里の指示に従い、教室を出ていく。


「良く知らないんだけど、何があったの?」


「え? えっとね……」


 その場にいなかった春奏はそばで見ていたであろう乙葉に話を振る。


「勝ったと思って油断したら頭におもいっきり頭突きされたのよっ! しかもそれが原因で負けるしっ!」


 乙葉が応える前に祭里は自身が敗北した経緯を早口で説明した。今にも舌打ちしそうな形相はその時の無念を垣間見させる。


「痛たた、また擬似疲労が……っ」


 頭部に受けた痛みがまだ抜けきらず、祭里はうなだれた。


「なんでそんなに政平は運動神経いいのよ。あんた文化部でしょ」


 トライデルタのゲームシステムは性質上、個人の身体能力も無視できない。Lv.及び職種を抜きにした場合ものを言うのは結局己の身という事である。


「それは俺も気になったな。特別な鍛え方でもしてるのか?」


 京輔も純士の強さに興味があったため、会話に便乗した。


「日々の研鑽を怠らないだけさ。勇往邁進ゆうおうまいしん、正義はその先にあるからね」


「……分かるような分からないような」


 つまりどういうことだ? 純士の独特な返しに京輔は反応に困る。


「ん? 『正義』?」


 ふと、京輔は純士を凝視した。


「……どうしたの? 僕の顔に何か付いてる?」


 純士は小首を傾げる。中性的な顔つきも相まって中々に可愛らしい仕草だった。


「いや、気のせいだ。なんでもない」


 まさかな、と京輔は脳裏で否定する。


「そう言えば、あんた達は上手くいったの? その様子だと仲直り出来たみたいだけど」


 祭里は話題を変えた。その対象は京輔と春奏。


「仲直り? ふふっ、そもそも喧嘩なんかしてないわよ。ねぇ京輔」


 チラリと京輔に視線を送り、上機嫌で春奏は応えた。


「……あれ? 気遣って損した感じじゃない? これ」


「んー、そんなことはないと思うけど……」


 祭里は乙葉に同意を求め、乙葉は苦笑いで目を泳がせる。


「あっ、でもね! 京輔が今度二人で───」


「ちょ、何、ノロケる気? やめなさいよ」


「あはは、京輔君お願い」


「口を閉じろ春奏」


 わいわいと会話に花を咲かせる面々。チーム戦時に春奏が見せた陰りはどこにも無く、京輔は安堵する。






「はい、お待たせしましたっと!」


 しばらくして、大和が数本のペットボトルを抱えながら帰ってきた。


「つーか聞いてくれよ。今気づいたんだけど俺達六人だろ? 間違って七本買っちまった」


「ん? ……ああ、哲典の分か」


 哲典てつのり。早々に下校した京輔達の友人である。


「あいつは何故あんなに慌てて帰ったんだ?」


「実験がどうのこうのって言ってたぞ」


 京輔と大和はせかせかと別れの挨拶をしてきた友人の後ろ姿を思い起こす。


「実験って……。なんかチーム戦でハブかれてると思ったら、その準備をしてたってことね」


「心苦しかったけど、哲典からの申し出だったからね。決して蔑ろにしたわけじゃないよ」


 純士の発言通り、チーム決めの時に当然哲典も誘ったのだが、きっぱりと断られていた。


「そういうこった。……まぁ、仮に誰かハブくとしたら純士だしな」


「えっ……」


「パワーバランス的にそうなるか。仕方ない」


「ええっ!?」


 大和の言葉に京輔もノったところで、純士は酷くショックを受けた様に唖然とする。


「……っ」


「ばっ、お前、冗談に決まってんだろ!?」


「す、すまない! 俺達が悪かった! ……だからそんな泣きそうな顔するな」


「……そういうのはあまり感心しないよ」


 純士は体裁を保とうとするが、どこかぎこちない。


「これやるから! なっ!」


 そっぽを向く純士に大和はペットボトルを投げ渡す。


「全く。まぁ、いいけど……」


「ごめんて。ほら、お前らも受け取れ。頑張って戦いあった者同士称え合おうぜ!」


「そうね。そうしましょうか」


 大和は他のメンバーにも配り、その流れで一つ咳払いをする。


「さて、じゃあ、とりあえず乾杯!」


 京輔きょうすけ大和やまと純士あつし春奏はるか祭里まつり乙葉おとは。この六人の放課後は始まったばかり。談笑タイムはもう少し続く。











「……って、これ炭酸じゃない!? 私が飲めないの知ってるでしょこの馬鹿っ!!」


「危ねっ!? 投げんのはナシだろ!?」




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