第37話 授業(チーム戦) ⑨
明けましておめでとうございます。
「うげぇぇぇえええっ!?」
「ああっ!? ご、ごめん……っ!」
短めの一本結びと少女にも見える中性的な顔つき。他のメンバーとは違い学ランを着用しており、額にはハチマキを巻いている。
「そ、そりゃねーぜ、あっ君よぉ」
「躱されるとは思わなくて……」
そんな容姿を持つ小柄な少年・純士は蹴り飛ばしてしまい、倒れ伏している味方の大和に駆け寄った。
「流石にここまで上手くいくとは思わなかったわ」
うわぁ……、とでも言いたげな表情で祭里は二人のやりとりを傍観している。
「……つ、つーかどゆこと? いや、大体分かるけど」
「あれは“妨害”系だな。そうだろ? 祭里」
京輔もゆっくりとした足どりで大和に近づき、側にいる祭里に話を振った。
「そうよ。種族がら魔法はあまり得意じゃないんだけど杞憂だったみたいね」
種族によって法術の得手不得手は左右される。戦士族は魔法よりも技法、魔導士族は技法よりも魔法、そして剣士族はほぼ両立といった区分だ。
「“胡乱火”だったか? 最近更新された魔法だよな」
自身を象った炎を一気に燃え上がらせ相手の誤認を誘う火属性魔法“胡乱火”。炎とはいえ熱によるダメージは無く、目くらまし専用の魔法である。この様に相手を欺き、惑わせる法術の系統を“妨害”系と呼ぶ。
「チクショー! 咄嗟にしゃがみやがって! 完全に勝ったと思ったのによー!」
「はいはいお生憎様。それと、……これで終わりね」
何食わぬ顔で祭里は片足を後ろに振り上げると。
「……へ?」
「ふっ!」
次の瞬間、大和のこめかみ付近を蹴り抜いた。
「ぐほえっ!? あっ───」
HPが0になった証として大和の身体から光の泡が浮かび上がっていく。
「───マジかよ。スゲー納得出来ないんだが……」
不貞腐れながらとうとう大和は消失した。
「さてと、スッキリしたところで……」
京輔と純士に目配せし、祭里はある考えを口にする。
「八衛は体育館に行きなさい。そして政平はここで私と勝負よ」
しっしっ、と払いのける様に手を振り、命令口調で指示を出す祭里。
「どういうつもりだ? あまり要領を得ないな」
二対二で仕切り直すという提案をされると身構えていた京輔は疑問に思う。
「自分で言うのもなんだけど、私はそこそこ勘がいいの」
その返答を受け、気づかれている事に京輔は気づいた。
「……ありがとう。恩に着る」
その場にいる三人に背を向け、屋上出入り口を目指し駆け出す。
「えっ、あっ、……いっちゃった」
純士は口を挟まず、京輔の後ろ姿をただただ見送った。
「今のって、つまりそう言うことかい? だったら僕も……」
「ほっときなさいよ、面倒だし。それよりも」
火花が舞い、空気が揺れる。その足刀による一撃は純士を標的にしたもの。
「く……っ!?」
「こっちに集中しなさい。格下だと思ってタカをくくってると痛い目見るわよ」
祭里は不敵な笑みをもって戦いの狼煙を上げた。




