第32話 授業(チーム戦) ④
「いや無理ィー! お前卑怯だぞっ!?」
「うっさいわね! さっきの威勢はどうしたのよ!」
燃え盛る焔を纏う少女。その少女から繰り出される猛攻に大和は防戦一方だった。
「カッケーと思って言ってみただけだっつーの! 間に受けてんじゃねぇ!」
祭里の蹴り技に対して金属バットで応戦する。しかし、客観的に見て、劣勢なのは紛れもなく大和であった。
「俺だってなぁ、いつもの装備だったらもうチョイやれんだよ!」
チーム戦を始めるにあたり各チームの勝率をできるだけ平等にするため、とあるルールをクラス内で設けている。
「それって私も適応されない?」
「まあなっ!」
『防具はブレザーか、それに準ずる物に限り、技法発動の媒介として持ち込める武器は一つまで』。武器には所有制限、法術には発動制限と呼ばれるものがあり、ブレザーを防具として着用している場合はあまり強力な武器・法術は使用できない。
「つーか京輔は何してんだ!? 早くヘルプ来いよ頼むから!」
大和VS祭里。その一方、京輔は───。
「正直難しい。と言うか諦めろ」
───絶賛戦闘中である。
「行くよ。“旋風”!」
京輔が相手をしている人物・乙葉は技法を発動し、木刀を縦に振るった。
「メタリカル・ガード!」
風属性技法“旋風”。攻撃速度のみを加速させる技法。武器の指定は無い。これを用いた乙葉の斬撃が京輔を襲う。
「えっ? あ……」
「流石だな。だが、くらうわけにはいかない」
木刀を自身の眉間近くで掴み止める京輔。乙葉の斬撃は、武器又は防具を硬化させる鋼属性技法・メタリカル・ガードで受け切った。
「あれ? 京輔君も武器持ってたんだね」
「一応、念のためにな」
木刀を掴んでいる手には指抜きのレザーグローブが履かれている。普段は使わないが『一つまで持ち込める』ため、京輔は用意していた。
「そっか。でも、ちょっと迂闊かな」
「ん?」
「“破魔断斬”!」
しまった、と思うよりも早く反射的に木刀を離す。
「……なッ!?」
しかし、間に合わず、膝から崩れ落ちる様にへたり込んだ。
「油断大敵、だよ」
「くっ……、ち、力がっ……!?」
全身の脱力を感じ、ただただ焦る。そして、焦りの原因は他にもあった。
「初見の時から違和感はあったが、この技法は……!」
乙葉の木刀は何故か滑らかな光彩を放っている。それを見つめ、京輔は確信した。
「そう。これは光属性」
膝立ち状態の京輔に乙葉は木刀の切っ先と芯の強そうな視線を向ける。
「勝負あったかな」
その挙動はまるで獲物に対しての舌舐めずりだな、と京輔は思った。
「それはどうだろうな。……さあ、来い!」
やや挑発じみた言葉を投げ掛ける。
「あはは、京輔君らしいね。───伐切斬」
連続斬りの技法。全てまともにくらえば一溜まりもない。乙葉は気を緩めず、それを止めとして発動した。




