第30話 授業(チーム戦) ②
「あ、そうだ! なんか賭けねぇか?」
「……はあ?」
チーム戦が始まる少し前の昼食時。いつものメンバーは教室で机を囲んでいた。
「俺らとお前らのチームでバトって、負けちまった奴は罰ゲーム、的な!」
話題は午後から催す予定のチーム戦について。そのままでは少し張り合いに欠けるという事でモチベーションを上げる方法を大和が提案した。
「ふーん。じゃ、あんた負けたら全員に土下座しなさいよ」
「味方にも!?」
祭里はつまらなさそうな顔で大和の発言を一蹴する。
「遠回しにくだらないって言ったのよ。もっと他にないの?」
「おっ、ビビってんのかな?」
「そういうのいいから」
大和が挑発し、祭里は適当にあしらう。度々散見される日常的な光景であり、大概これで話は霧散する。
「んー、提案自体は悪くないんじゃない?」
しかし、今回は例外だった
「えっ、本気で言ってるの?」
大和に助け船を出したのは春奏である。そんな春奏を祭里は不思議なものを目撃した様にまじまじと見つめた。
「せっかく用意した時間なんだし、それくらいのオマケが有ってもいいと思うわ」
春奏はにこやかに尤もらしい理由を口にする。
「ねぇ、京輔もそう思わない?」
「ん? ……あ、ああ。いいんじゃないか」
どことなく押しの強さを感じ、京輔は肯定した。
「はい! 私もいいと思います」
京輔に続き、乙葉も賛成意見として冗談っぽく挙手し、あはは、なんちゃって、と控えめな微笑みを浮かべる。
「三人とも……っ、はぁ〜……」
何かを諦め、溜め息を一つ。しかし、多数決的に自身がマイノリティーである事を祭里は納得出来ないでいる。
「おいおい、往生際が悪いんじゃないのか〜。祭里ちゃんよ〜」
流れが来ている事に調子づいたのか、大和は座っている椅子の背もたれを傾け、煽りながらふんぞり返った。
「タイマンじゃあ、お前が不利だと思って、これでも配慮してるんだぜ〜」
追撃を止めない大和。その様子は傍目から見てもそこそこ鬱陶しいものだった。
「……へえー、そう。それなら私も賛成。だけど───」
口元を歪め、しかし目は決して笑っていない。
「───ルール変更よ。負けた奴はその時戦って勝った人の命令を一つ聞くこと」
祭里の沸点は大和の想定よりも低かった。
「えっ、マジ?」
これが、二つのチームが戦闘を行う時に生じる緊張感の正体である。




