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目が覚めたときには

作者: 奥野鷹弘
掲載日:2017/03/03

世界の何処かの木々は、寒さに耐えながら忍んでいた。

目を開いたこの数分間、僕はどこに居るかわからなかった。よく見渡すと懐かしいような景色が、狭いながらも広がっていたことに気が付いた。眼をすりながら、なんだかぎこちない身体を起こしてみた。そうだった、僕は横たわって居た事に少し驚いた。そんな起き上がった身体と共に、自分の首基に引っ掛かる何かの線と音が軽く背後でした。

世界の何処かの木々が風に吹かれたとき、僕は今の状況を把握した。そうか、僕は、この部屋で自殺未遂をしたのだ…と。そうして始めて、僕は今までの苦しみからの空泪を表に出した。


思い出せやしないその苦しさは、言葉でも感情でも、ましてや何かの模体として残せるようなものではなかったらしい。だからこそ僕は、切れないコンセントを首輪にし、部屋にあるカーテンポールに巻き付け、命を投げ出そうとしたのだろう。今考えてみれば、なんと不様な息返りだろう…。心臓も問題なく動き、思考もしっかりしている。慌てて遺書を捜したとしても、どこにも用意はされてなかった。封を閉めるようにきれいにベッドで塞いだドアはには、誰も入ってきた様子もなく、神様の導きによって僕は生かされたのだと気が付いた。


ゆっくりと首基からコードを外した。そして、それをした両手を見つめ、顔に強くうずめた。


ドラマでよく観る助かりかたは、誰かに見守れて居るなかでの病室だった。心配そうに見守る姿は、アンチでも心を奪われるような切なさだった。それなのに僕は、誰も知らぬ中で自殺をし、奇跡的に復活した何とも言えぬ経験を植え付けられた。『生きていた』そんな言葉を胸に響かせても、トンネルのない森林の中で叫んでるような空虚なイメージが沸き起こるだけだった。


閉められたカーテンを開けるやいなや、昼間の太陽の光が差し込んできた。笑えないほどに可笑しく、泣けないほどに空しく、独り、この身体を憎んで息を呑み込んだ。

『これから』という先に僕はいない。今から歩く僕は、きっと何かを求められてる気がして、でも未来には存在しないという気がした。愛という刹那を知ったときには、今までの自分とここからの自分を好きでいられたらいいな。

そんなふうに想いながら、窓から見えた風を、窓を開けて取り込んだ。


それから間もなく母は玄関の鍵を開け、僕の部屋に飛び込んできた。きつく抱き締められた僕の身体は冷えきってなのか、母の温もりがヤケに伝わってきて涙が溢れた。心の中では何度も「ゴメンネ」を繰り返しながら、「大丈夫だよ」と耳元で呟き続けた…。



そんな涙目で見た滲んだ僕の携帯には、何度も着信があったとされるランプが密やかに点滅を繰り返していた。

ふと僕は、なぜだか、世界の何処かの木々の赤ちゃんが芽吹いた気がしたんだ…………

母が作ってくれたご飯は、風邪がひいたときには出る、特製鮭雑炊だった……

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