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証拠証明事実

 西岸 大輝、彼の親は共働きで家にいることは少ない、そのため彼は孤独の寂しさを満たすため青城家に足を運ぶことも多かった。青城家の家族は彼に対して温かく接し、まるで家族のような関係性があった。

 少し抜けていてお茶目なおばさん、たくましく物知りなおやじさん、小学校以来の親友であるあおぎ、明るく元気なエミちゃん・・・

 特にエミは「大きくなれば西岸家に嫁ぐ」と言い出すくらいに彼のことを慕っていた、その度に極度のシスコンで兄貴であるあおぎにグーで殴られたものだ。

 彼はそんなあおぎが羨ましくもあった、自分自身以外の存在にあそこまで愛情を注げるのは彼にはできないからだ、それにあまり面にださないがエミはあおぎに対して信愛の念がある、家族とは思えないくらいの相思相愛っぷり。


そして彼も密かに恋心を。


「てめぇ!、なにしやがる!?」


「お前こそ何してんだよ!?、シスコン変態青城 泉はどこにいったんだ!」


「俺に年下属性はねぇ!、俺はただの変態だ!」


 だが、あおぎはその愛を忘れた、自分があそこまで羨ましく、妬ましく思っていたその関係性を、彼は忘れている。


「なら、お前の家の子供部屋はなんだ?、2部屋あるはずだ、ひとつはお前、ならもう1つは!」


「部屋が2つ?、・・・」



―――(ФωФ)―――



 大輝と再開した大通りは避け、裏道経由で青城家に到着した、ここに戻ってきた意味、それは大輝の怒りの原因である俺の妹の存在を証明するため。


「これ、おやじさんか?」


 玄関で倒れているおやじを見て大輝が確認してくる、泣きそうになるのでなるべく見たくはなかったのだが。

 大輝に無言で頷いて俺は先へ急ぐ、階段を上り自分の部屋を通過、一番奥にある部屋へ直行した。

 部屋の扉には板が付いていてそこには。


エミの部屋


「これ、俺の字か?」


 大輝の言う妹、それは俺の記憶の中にはないが、それらしい痕跡は十分に残っていた。


 大輝が近くにいることを確認、ドアを開け放つ。

 中は女の子らしい部屋だ、沢山のぬいぐるみがベッドに置いてあって、勉強机は整理整頓が行き届いている、収納棚の上にもぬいぐるみがあって、そのぬいぐるみだけは写真たてを抱えていた。

 写真は昔のもので、満面の笑みのおやじに、笑顔のおかん、そして不貞腐れた顔の俺がいた。


「――――!」


 後ろで大輝が息をのむのがわかった、その理由は写真にある。

 写真の俺の隣に不自然な空間があるのだ、まるでそこに誰かがいたかのように。


「大輝」


「ん?」


「お前の言ったことは正しいのかもな。

ただ、俺は自分の妹を覚えていない」


「・・・」


「だから、つきあってくれないか?」


「なにに」


「エミ探しに・・かな?」


 その言葉に大輝がフッと鼻で笑ったのがわかった、その笑いには協力の意志が混じっていると俺なら理解できる、あと、大輝が鼻で笑う時は。


「しかし、腹が減った、なんか食い物ないか?」


 大体腹が減っている。



―――(ФωФ)―――



青城 泉の部屋にて


「ーーーーー」


 なんか声にならない声を発してる気がする、いや、気がするだけだから発してないのかも。

 朝だよな、朝だ、朝・・・


「んっ、んーーー」


 背をピンッとのばして身体をほぐす、同時にシャキッと脳を活性化!

 自分の股間の正常運転を確認っ!、大輝に見られる前にポジションを変更!


「やっぱ朝○ちを人に見られるってはずかしいしな」


「なにしてんだお前」


「ノオォーー!!」


 手を頭にまわしのけ反るマイガッのポーズ、見られた!、人の毎朝の日課であるチンポジメンテナンスを!、親にもまだ見せたことないのに!

 部屋の入り口で固まっている大輝を忌々しい目で睨む、しかしこいつの接近に気がつかなかった?


「あ、俺がアレなDVDの音を遮断するために防音加工したんだった」


「お前なぁ・・・っておい!、ちょっと来い!」


 半ば強引に袖を引っ張られ俺も渋々ついていく、一直線に向かった先は我が家のリビング、いや、リビングがどうした。

 大輝が寝ていたせいで少し皺のよったソファー以外に気になる所はない、テレビから流れるバイオリンの音、机の上に乗った、大輝が作ったであろうトーストとコーヒー、一週間近く掃除してないせいで少し埃っぽいのは仕方ない。


「あおぎ。お前まだ現状が理解できてないのか・・・」


 失敬な、俺だって今の人類の危機的状況は理解している、大輝のようにテレビを観ながらモーニングを満喫するなんて状況ではないことくらい。


「番組が放送されてんだろうが!」


「っ!」


 テレビから流れるバイオリンの音、画面にはあからさまにCGを使った草原が映されていて、その中心にいる人が優雅にバイオリンを牽いている。

 灰色のローブフードを着たそれは華麗に舞っている。


「誰なんだこの人」


 大輝の疑問の声、俺はそれに答えることができる。

 曲もそろそろ終わりに近づき、あいつは静かに曲を終わらせる、そして一礼したところで画面があいつは顔へズームアップされた。

 ズームされたのにも関わらず口元しか見えないあいつは、ギザギザの歪な歯を覗かせて笑い、喋った。


[おはようございます人類の皆さん、ワタシは黄桜 春美と申します、いごお見知りおきを]


 黄桜高校8代目校長 黄桜 春美。


「うちの校長先生だ」



電車内にて投稿乙

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