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第2話

 5月も終わりに近づき、新入生のほとんどは新しい環境に徐々に適応し、それぞれのコミュニティーを形成していた。ほとんどの人が各自のコミュニティーでそれぞれの居場所を見つけ、馴染んでいった。萩村直樹もそんな新入生の枠から溢れることなく、気の合う友達を見つけ、自分のコミュニティーを形成していた。しかし、今の様に自然にクラスの輪に入って行けるようなになったのもごく最近のことである。

 中三の夏に、急遽父のアメリカへの海外赴任が決まった。この赴任に関して、萩村家では、ある話し合いが持たれた。それは、直樹の進学先をどうするのかについてである。すでに、母は父とともにアメリカに行くことを決めていた。この流れでは、当然、自分も一緒にアメリカへ行くものだと思い込んでいた。しかし、問題になったのは、父の海外赴任が次の年の4月からの2年であったことである。つまり、もし仮に自分も一緒にアメリカへ行った場合、高校3年生に侵入すると同時に、日本の高校に編入して、大学に進学するための受験勉強を始めないといけなくなる。親としては、自分には自分が通いたい大学に通ってほしいという考えがあったようで、できるだけ、直樹への負担が少ない形にしたかったらしい。一応は、直樹の意見も聞かれたが、突然決まった父の海外赴任の話に実感がわかなかったこともあるが、今まで両親と生活することが当たり前だった中学3年生の直樹に自分の進路をどうしたのか、一人で生活していけるのかということを聞かれても答えることができなかった。だから、直樹自身は両親の決定に従うという結論を示すことしかできなかった。萩村家は借家ではなかったので、このまま一人暮らしをして地元の高校に通う案など色々な案が出たが、最終的に母の実家で預かってもらい、そっちの地元にある高校に通うという結論が出た。


 高校受験という一つの関門をクリアし、祖父母と叔父さん夫婦の暮らす母方の実家から、自転車で20分くらいの距離にある私立の高校に進学することとなった。私立というだけあり、公立高校よりは施設が充実しているという点では、直樹自身も満足していたが、中学までの友達と別れ、全く新しい環境で高校生活を始めることに対する不安は大きかった。さらに、合格した私立永山高等学校は私立といっても、昔からある高校であり、入学してくる生徒もほとんどが地元の人間である。そのため、新入生のほとんどは、まず、出身中学が同じもの同士で集まり、そこから部活などのつながりを生かして、友好の輪を広げていく。

そうなると、そもそも同じ中学出身の人がいるはずもないので、直樹はスタートの時点で出遅れたことになり、必然的にクラスの輪に入るにくくなるわけである。結果として、直樹はごく最近までクラスの中では、浮いた存在であった。


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