第13話
「それじゃあ、私は電車だから、ここで失礼するわ。直樹君、森田さんのことお願いね」
「はい」
咲季は学校の最寄り駅から3つ隣にある駅から通っているとのことだった。直樹は学校から自転車で20分くらいの所に住んでおり、聞けば佳織はその間くらいに住んでいるとのことだった。夜遅いと言うわけではないが、一応、咲季の命令で直樹が佳織を送っていくことになった。
「じゃあ、俺たちも行くか」
「うん」
20時前ということで、商店街の店はほとんどが閉まっていたが、駅前ということで人通りなないと言うことはなかった。
「なんか、ごめんね。面倒なお願いしちゃったみたいで、明日って本当に予定とかなかったの?」
「あ、うん。基本的に休みの日は家にいるだけだし」
一緒に昼食を取る友達はできたが、それも学校の中だけの付き合いで、休みに日に遊びに行くほどの友達はいなかった。
「それって高校生としてどうなのかな…あ、そうだ。全然関係ないんだけど、1つ聞いてもいいかな?」
「俺に答えられる範囲であれば」
「萩村君の家だと私と同じ中学になると思うんだけど、同じ中学じゃないよね?」
「いや、違うよ。俺って3月にこっちに引っ越してきたから。ていうか、何でそんな事聞くんだ?」
「私さ、そんなに記憶力悪くないし、同じ中学で同じ学年の人だったら顔くらい分かると思うんだけど、萩村君のことって全然記憶になくてね。この間まで、教室にいるときは常に本読んでいたし、もしかしたら影が薄すぎて見落としていたのかなみたいな」
「それって俺にスゲー失礼じゃない?」
「確かに、そうだね」
そう言って佳織は笑った。
「なあ、森田ってもしかして先輩のこと苦手なのか?なんか、今日一緒にいるときとキャラが違うっていうか、そんな感じに笑ったりしなかったし、そもそもあんまりしゃべらなかったよね?」
「別に中村先輩のことは苦手じゃないと思うよ。さっきとか調べものしている時の中村先輩って、なんていうか話しかけづらいっていうか、すごく集中しているでしょ?しかも、私は全然気づかない事や思いつかないことをすぐに見つけるし、なんかレベルが違いすぎてね」
「そんなことないと思うけどな」
咲季は頭がいい。本人の話だと、成績は悪くないと言っていたが、咲季が持っているのは学校の勉強とはもっと違う賢さだと直樹は思っていた。もちろん、勉強もできるだろうが、よく頭がキレる人だ。
「それに、萩村君もすごいと思うよ。中村先輩に負けないっていうか、中村先輩が考えていることわかっているみたいだし」
それは過大評価だと直樹は思った。咲季の言うことは理解できるが、考えていることまでは分からない。今回の件について、咲季には直樹や佳織には考えもつかない可能性まで考えているとし、その可能性について、自分の中で十分に評価している。
「さあ、どうだろうな。俺は至って普通な高校生だと思うけどな」
「少なくとも、あの中村先輩が認めてボラ部に入部させたってことは普通ではないと思うよ。あ、もうここでいいよ。家すぐそこだし、送ってくれてありがとうね」
「ああ、じゃあまた明日な」
「うん」
そういって、佳織は交差点を曲がっていった。直樹はその背中と揺れるポニーテールを見送った。




