第11話
卒業アルバムには恩師の写真として、当時の先生の写真が写っていた。5年前ということで見たことある先生も数名いた。直樹たちは当初の予定通りこの先生たちに話を聞きに行った。今の教頭が当時の木下健のクラス担任だったようなので、まずは教頭のもとへ向かった。
「それで、教頭先生に木下健って人のことを教えてもらいたいんです」
ここまでの話は、咲季が教頭に説明した。いきなり、咲季に「木下健について教えてください」と言われた時の教頭はさすがに驚いていたが、佳織の手紙を実際に見せたらあながちウソではないと思ってくれたようだった。
「教えてくれと言われてもな…木下のことをは覚えているよ。1年の1学期だけうちの学校に通って、退学したからなんとなく印象には残っているんだが、卒業生でもないから今どうしているかとかはわからないね。あ、いくら中村でも学校に残っている個人情報は当然教えられないからな」
「それは分かっています。でも、退学した理由だけでも教えてもらえませんか?」
「確か、留学するって言っていたよ」
「留学ですか?どこへ留学したかってわかりますか?」
「いや、そこまでは分からない」
「そうですか、ありがとうございました」
結局、つかめた手がかりは木下健が留学しいたということだけだった。それはそうと、さっきの野村先生とのやり取りといい、教頭とのやり取りといい咲季は一体何者なんだ?少なくも、教師陣の間でそれなりに知名度があるようだし、評判も悪くないようだ。そうでなければ、書庫に入れてもらえることはありえないと思う。
「さてと、二人とも、職員室まで来たことだし、エミリー先生にも挨拶していきましょう」
「直樹君、こちらがボラ部の顧問のエミリー先生よ」
「えっと、ボラ部に入部しました1年1組の萩村直樹です」
「Nice to meet you ナオキ。サキからメールで大体のことは聞いているわ。ボラ部顧問で英語担任のエミリー・スミスです。生徒は大体ファーストネームで呼ぶから、ナオキもそれで構わないわ」
エミリー先生は流暢な日本語で言った。名前を呼ぶときには少しカタコトになっていたが、先生の日本語は日本人のそれと比較しても何ら粗相のないものだった。エミリーは英語の教師で、ボラ部の顧問であることしか直樹は知らなかったが、こうやって話してみると実にフレンドリーな先生だ。
「こちらこそよろしくお願いします。エミリー先生」
「ところで、サキ、この子は?メールだと新入部員は一名ということだったと思うのだけれども?もう一人入ったのかしら?」
「先生、昨日メールした依頼者がこの子です。」
「ああ、そうでしたね。えーと…」
「1年1組の森田佳織です」
「Nice to meet カオリ」
「それじゃあ、先生、今日のところはこれで失礼しますね」
「はい、それではまた近いうちにね。サキ、一応メールだけはこまめにお願いしますね」
「はい」
エミリーに挨拶してから、直樹たちは職員室を出た。
「先輩、さっき言っていたメールって何ですか?」
直樹はエミリーと咲季との会話の中で出てきた「メール」について、気になっていた。
「ああ、エミリー先生って部室に来るのが遠いと言って基本的にはボラ部に顔出さないんだけどね。一応、顧問だし、活動の報告はメールですることになっているのよ。と言っても、先生がいないときに何かあった時だけだけどね」
「そういうことですか?ちなみに、エミリー先生はボラ部の活動についてどのくらい知っているんですか?特にもう一つの方については?」
先ほどの会話からある程度は知っているとは推測できる。しかし、活動の一部しか知らないのであれば、直樹がボロを出しかねないので、一応確認しておく必要がある。
「全部知っているわよ。その上で学校には黙っておいてくれているわ。まあ、今年で二年目の先生だし、私たちとも年が近いからその辺のことは分かってくれているみたいよ」
「そうですか」
「さて、二人ともこの後は暇かしら?もうそろそろ活動時間が終わるし、もし時間があるなら近くの喫茶店でお茶でもしながら、今後の方針を話し合いたいのだけど?」
※補足
10話で木下健が写っていた卒業アルバムでは6年前でしたが、この話では5年前になっています。これは間違いではなく、卒業アルバムには年度が使われているためです。




