雪の中の少女
お久しぶりです&はじめまして。surumeicaです。気軽にすぅちゃんって呼んでください(
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*年前、雪がひらひらと降る中。
飾りつけされた商店街の広場で、人を待っていた。
早く来すぎたかな。楽しみだな。早く来ないかなぁ。
待ち合わせの30分前に到着して、ワクワクとドキドキがないまぜになったまま、何度も身だしなみをチェックして時計をチラチラと見ていた。
待ち合わせの20分前になり、10分前になり、5分が過ぎ、10分が過ぎて。
段々不安が大きくなってきた。
寝坊したのかな。電車、遅れてるのかも。もしかして迷っちゃったのかなぁ。
初めは楽しみに思う気持ちの合間にこういうことを不安に思うくらいだった。メールを送り大丈夫?と聞いてみたけど、返信はなかった。
30分が過ぎ、40分が過ぎ、1時間が過ぎた。
すっぽかされたのかな。もしかしたら嫌だったのかも。何か急用が出来たのかなぁ。
段々嫌な考えばかりが頭に浮かぶようになって、祈るように待った。本当は探しに行きたかったけど、もしすれ違いになったらと思うと怖くてできなかった。
2時間が過ぎ、3時間が過ぎ、4時間が過ぎた。
おかしいな。交通事故に遭ったのかも。大丈夫かな。もう帰っちゃおうかな。でももうすぐ来るかもしれないし。
不安は膨らむばかりで、最初のワクワクやドキドキはもうどこにもなかった。事故に遭っていたらと心配で堪らなかったが、動くことはできなかった。何度も電話をかけたが繋がらず、メールを送っても返事はなかった。
やがて飲食店が混み始め、おやつ時になり、日が暮れた。
どうしたんだろう。寒いな。これ以上待ってたら風邪ひいちゃうかも。でももう少しだけ。
何度も自分に言い聞かせて、ただひたすらに待った。朝見かけた人を何人か見つけたが、誰も此方を見なかった。やっぱり都会の人は冷たいな、何て他人事のように思った。
日が沈み、夜が来て、日を跨ぎ、ようやく自分が死んでいたことを思い出した。
3年前、私は幸せの絶頂にいた。
ずっと好きだった彼に告白し、付き合うことができたのだ。
初めて手を繋いで、デートをして、キスもして――彼とすること全部が初めてで、ドキドキして、でも嫌じゃなくて、嬉しくて。
彼と他の女の子と楽しそうに話しているともやもやして、でもそれは彼も同じで。すれ違うことも喧嘩することもあったけど、その度に仲直りして前より仲良くなって。
友人にはよく爆発しろ!と罵られたっけ。
そうして半年経った頃、彼にクリスマスは一緒に遊びに行こうかと誘われた。
私がそれを断る訳もなく、即座に了承したら、嬉しそうに笑った彼に何処に行きたい?と聞かれた。
遊園地にしようか、水族館にしようか、はたまたちょっと遠出をしてみるか。彼と一緒に悩んだ時間さえも楽しかった。最後に決まった場所は、何度も2人で出かけた、馴染み深い商店街だった。
特別な日だし、特別な場所がいいな、と言った私に彼が提案してくれたのだ。
彼に3つプレゼントを買って、髪と服を整えて。待ち合わせの30分前に着いた私は、その日、彼に会うことはなかった。
いくら待っても彼は来なくて、日が暮れた頃ようやく諦めがついた私は家に帰ろうとしていた。
その途中で、信号が赤なのに気がつかず、走っていたトラックに撥ねられて死亡したのだ。痛みはなかった、と思う。
そうして私は、幽霊になった。
気がついたら商店街の広場にいた。いつの間に寝ちゃったんだろう、変な夢だったな、なんて思って自分の手を見ると透けていて、誰も私を見なくて。おかしいなと思って色々な人に話しかけたけど、皆が皆無視をして。
そこに友人が訪れて、私の目の前で泣きながら私の名前を呼んだ。
あぁ、私は死んだのかと、ようやく悟った。あれは夢じゃなかったんだと。
何で私は幽霊になったんだろう。何で彼は来なかったんだろう。何で。何で。何で。
疑問は尽きなかったけど、どうやら私はそこから動くこともできないようだったので、調べることもできなかった。
その友人が来て以来、ここには誰も来なかった。
一昨年も、去年も、そして今年も。
毎年クリスマスになると、自分が死んだことを忘れて彼を待つ。
彼は一度も現れない。
日付が変わって、ようやく自分が死んでいることを思い出す。
あぁ、今年も彼は来なかった。
安堵と落胆がないまぜになったため息を吐き出す。息は出ない。
彼が生きているならそれで良い。私のことは忘れて。誰か別の人と幸せになって。
彼は何で会いに来てくれないの。私のことを忘れないで。誰のものにもならないで。
クリスマスが過ぎると、相反する思いに苛まれながら、通り過ぎる人波の中から彼を探す日々が戻ってくる。
来年も、再来年も、ずっと、ずっと。
私は彼を待ち続ける。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
1年近くスランプが解消できないのでこれは不味いと思って創作お題メーカーさんの力を借りて即興で書きました。
いつか別視点で書きます。