四幸八喜
震災から一年。
それぞれの幸せについて考えようという企画「HAPPY」参加作品
「四苦八苦」はひとがすべて背負わなくてはならない、生きることの不幸をあらわす言葉だそうです。
詩なのかエッセイなのか、うまくまとまらないうちに企画の締め切りになってしまいました。
とりあえず、参加した、ということで。
また、母の四十九日に寄せて綴ったものでもあります。
生きているって、いいな、とひとりでも多くの方に伝わればと願って、つたないものですが寄稿しました。
生きること
大気も薄紅濃紅 艶やかに咲き誇る春爛漫
空の蒼 海の青 雲の白 森の緑 輝く盛夏
茜 黄金 錦に染め上げられる秋の山里
雪の白 大地の銀 鋼色の風に凍りつく冬の大地
めぐる四季、蘇る命を、今年もまた見届けることができた春。
再生する命、生は歓喜に満ちている。
老いてゆくこと
掌、同じ大きさになったのね
背丈、超えられてしまったね
白髪、増えたでしょう
物忘れ、ひどくなってきたのよ
あなたたちが成長したぶん、皺や染みが増えちゃうのね
いつまでも若くなくていいのよ
神様にもらった時間を、自分なりに生きてきた証拠だもの
病を得ること
みんな、いきなり優しくなるね
歩けないと、手を差し伸べてくれるね
食べられないと、甘くて柔らかいものを持ってきてくれるのね
なかには、がんばれとか、たくさん食べてとか、早く治ってとか励ます人もいるけどね
この痛みと苦しみを知ったら、同じ病気や怪我をした人には、言わないようにしようと思うの
体験しなかった病気や怪我は、きっともっとつらいんじゃないかな
だから、がんばって、とは病人には言わない
「欲しいものある?」
「して欲しいこと、ある?」
苦しかったら、休めばいい
つらかったら、うずくまっていていい
背中を撫でてあげる
痛いところ、さすってあげる
痛かったら痛い、苦しかったら、苦しいって言ってもいい
助けてって、言われても困るけど、
そのかわり、そばにいてずっと話を聞いてあげるよ
あんたに私の痛みはわからない、って叫ばれても
そばにいるよ
優しくなりたい、どんな痛みも絶望も包み込んで、同じ時間に生きたことが大切だと思えるように
死に逝くこと
あなたにだけ教えてあげる
死そのものはね、苦しくも怖くもない
あれは、至福
痛みも、苦しみも、しがらみも、執着もない
リセット
すべてから解放されて、軽くなって、笑いがとまらないほど、幸せな気持ちでいっぱいになる
思えば、あの破裂しそうなほどの幸福感が、精一杯生きた魂へのご褒美なんだろう
ただ、
そこにいたるまで、カラダから命の火が消えるまでが、死ぬほど痛かったり、苦しかったりするんだ
だから、精一杯、ぎりぎりまで生き抜くことでしか、渡しの切符はもらえないんだよ
そうそう、蘇生させられたときは、胸の中に無数の針が刺さって暴れているような激しい痛みと、息のできない苦しみに、もう自分はこれで死ぬのかと思った
生き返っただけなんだけど
怨憎会福
きらいな人に会うのは確かに苦痛
でもねぇ。
あの人たちにも、大切な人たちがいたりするんだ
その人たちにも、大切な人たちがいて、そのうちの幾人かは、私やあなたの大切なひとだったりする
うまくいかないものだけど、そうやって支えあって、めぐり合わせているんだから、仕方ないね
愛別離幸
離れているとなおさら、恋しくなる
別れて始めて、愛しさを知る
亡くして始めて、その大きさを知る
だから、再会できれば喜びが大きく、喪失は思いをさらに深くする
出逢いは別れの始まり それは変えられない未来
それゆえに、記憶に残る表情と交わした言葉が永遠に胸に刻まれる
じゃあね、とその日だけの別れでも、笑顔で言えるといい
もしかしたら、それがその人と交わす最後の言葉になるかもしれないのだから
求不得喜
欲しいものを得たら、またすぐに別のものが欲しくなる
手に入れようとがんばったり、そのうち手に入るのを夢見ている間が、一番幸せだったりする。
求めたものが手に入っても、喜びは続かず、満たされることもない
だって、人の欲望に終わりがないから
たからくじも、なかなか確認しにいかないの
当たってるかな~と思っている間が、楽しいから
五蘊盛悦
色 五体が充実。肉を持つ身に、これ以上の幸せってないと思う
あまり元気溌剌だと、こき使われるっていうのは、あるけども
受 見る感じる、美しいものも醜いもの、痛みと快感
どっちもちゃんと受け入れて
想 想像・妄想なくして創作ならず
行 妄想を爆発、情報を整理したら現実に戻って原稿(PC)に向かう
識 全部合わせて起承転結を整えれば、小説一本出来上がり
小説書きには、五蘊盛の機能は必須の悦び苦しみ。
基本的に、鈴鹿は企画ものには参加しない主義ですが。
遊氏の熱意と、たまたま企画に合うものを書いていたという偶然から、こっぱずかしいのですが参加してしまいました。