楽-1 4362 お気楽 バード ※
お題:吟遊詩人 旅から旅へ 自由気ままなイメージが あるので ※今回長いです。
楽-1 お気楽 バード ※
あれ?私どうしたの?
確か……朝事務所に行ったら、ニコニコ顔のマネージャーが「急だけど、懐メロの1コーラスだけだけど、TVの仕事がとれたよ」って。
そのまま、タクシーでTVトキオへ。(なんとタクシーだよ!地下鉄やバスじゃなくて)
移動中マネージャーと打ち合わせ、メイクと衣装は局でやってくれるそう。
『日本人ならエンカだぜ!山の穴SP(師匠も来るよ~)』の収録が始まる。
すぐに自分の分の撮り、1曲歌ってトークも無しで帰りは電車でそのまま地方へ営業が今日の予定。
司会の人からマイクを渡され、その時左腕からガツンとした衝撃が……
『明音 空さん、落ち着いて聞いて欲しい、君は死んでしまったんだ。感電死ってやつだね』
え?嘘!そんな…… やっと、TVに出れたのに。
重いカセットテープ(販売用)とラジカセ(カラオケ用)担いで、一人で営業しなくて良くなるはずだったのに。
CDショップの店頭で特設ステージ(ビールケース並べただけ)で疎らなお客さん相手に歌わなくても済むはずだったのに。
ナイトクラブや温泉旅館で営業が出来るねってマネージャーも喜んでたのに。
そこから、有線もリクエスト増えるからって、いい先生に曲も貰えるさって、サクセスストーリーはこれからさって。
当たれば、悠々自適に生活できるって、好きな旅行も局のお金で出来るよって言われたのに。
車だって「王冠」位すぐさって、千住にマンションだって借りられるよって……
『えーと、都合の良い妄想は置いてもらえるかな?実は、君の次の人生の話なんだが』
今、良い所なのに五月蝿いわね、ん、きゃ~イケメン君、なんか神々しい イケメンなのに天使みたい。
『天使ね、43級天使のアイダだよ。で転生してもらうんだけど希望ある?結構融通利くよ』
アイダダヨさん?外人っぽいからそんな名前もあるか。ほぇ~、地獄とか極楽じゃないの?
『ア・イ・ダ。奈落や西方浄土もあるけど、お勧めしないなぁ。最近は異世界に能力つけて転生が流行りだし』
怒られちゃった。流行って、そんな軽いノリでいいのかしら?異世界かぁ、歌いながらのんびり旅が出来ればいいなぁ。そんなの高望みよね、きっと。
『じゃぁ、吟遊詩人の居る世界に音楽の才能つきでどうかな?』
え?そういえば、私しゃべってないよね?
『天使ですから、じゃ、いってらっしゃ~い』
はい?わぁ~~~~~~~~
・・・・・・「あ、はい!こちら日本から遠く離れた神秘の樹海です。いったい何が待っているのでしょうか?」
「古代のピラミッドか、はたまた秘境の土(Piii-)、え?ADさん土(Piiii-)NG?」
「A・D・言・う・な・ヤ・ラ・セ・ば・れ・る」
「て・め・ぇ・降・ろ・す・ぞ?……」
「番組中お見苦しい点があったことをお詫びします……」
「はたまた卑怯な原住民でしょうか?」
「やゃ!何かカサカサと音がします。危険を顧みず、果敢にレポートしたいと思います。(カメラさんこっち)」
はぁー、何時でもレポーターの仕事できるように練習する私って健気。
って、もう練習要らないんだっけ。
……
まだ着かないわね?
……
ん~、耳が良くなってる?これも能力かしら?
……
……
結局、20分くらい?歩いて広場みたいな所へ着いた。
西洋の兵士みたいな人達が、赤茶けた何かをを囲んで騒いでる。
!大きい甲虫、捕まえ様としてる?硬いのかな?中々、倒せないみたい。
あ、甲虫が、一人に圧し掛かった。だ・だ・大丈夫かな?
突然視界にニュース速報のようにテロップが流れ出し、BGMが響く。
カラオケ?《桃幻夢想》……
歌ってみる、おぉー?兵士さん諸共甲虫がゴロンと倒れる。
これが吟遊詩人のパワー?天使さん感謝。
あ、まだサビ前。いい曲なのでフルで歌うよ。
兵士さん達にそろそろと近づくと良く寝てる、良かった。
このままだと甲虫が何時起きるか心配だ。
その内の一人起こすと、その人は周りを起こす。(踏んでるー、あ蹴った)
甲虫を縛りながら自分たちは冒険者だと自己紹介してくれる。
「呪歌手が来てくれて助かったよ」
あれ~呪歌手?吟遊詩人だよね?違うのかな?聞いてみよう。
「吟遊詩人のつもりなんです」
なんでパンダを見るような目に?
呪歌手はそこそこ居るらしいけど、上位職の吟遊詩人は少なくて珍しいらしい。
剣盤を持って無いから、呪歌手に間違えたらしい。
今日は酒場が楽しみだと言われた。
呪歌手はあまり酒場等で歌わず、冒険者のサポートがメインのお仕事みたい。
剣盤無いと小遣い稼ぎの呪歌手に間違われるなぁって、どうしよう。
「マリオ親方の剣盤目当てにこっち来たんだろ?」
って、よっしゃ~ナイス。あ、
「でもお足が心許無くて」ぶっちゃけ無一文だ、参ったか。
「安いのなら、こいつでお釣り来るだろ、4金貨いくだろこれ。足りなきゃ助けてもらったし貸すよ」って担いだ甲虫を揺する。
んん?なんかよく見ると豚さん?あ、猪をそのまま甲虫にした感じ。ファンタジーだねやっぱ。
親方に会って猪甲虫と剣盤を交換してって、うるうるお目々の上目使いでお願いした。
「ふっ」って鼻で笑われた。どういう意味~。
試しに弾いてみろって四角や丸の書いてある板を渡された。これ楽器なの?よく見ると整然と四角と丸が並んでる。
「ピヨ~~」お、丸につい指が触れたらなにやら音が。四角はどうだ?「ぺ~~~」あはは、間抜けな音。
「音は出そうだな、それがあんたの音だ。剣盤は弾き手の感情が音に出るからな」
ショック~、悔しい見返してやる。
心を鎮めてきちんと弾いてみる。
指が自然に動く、流れる旋律、誘われるように私は歌っていた。
時にはピアノの様に、時にはバイオリンの様に、様々な音色が複雑に絡まる。
これシンセよりも凄い、欲しい音がそのまま出てくる。(見た目は安っぽい板なのに)
親方も目を見開いて驚いてる、どうだ~。
奥でゴソゴソしてた親方が戻ってきた、手には細かい螺鈿細工の紅い剣盤。
でも取っ手みたいなものが。抜いてみろと言うから、取っ手をつかんでソロソロと抜く。ショートソード?それで剣盤か、鞘が楽器なのか。
振ってみる、少し重い?護身用だからそれで良いらしい。
親方は、これなら私に相応しいだろうと言ってくれる。
……「ハウマッチ」指が5本「50銀貨?」「金貨」「5金貨かぁ」「50金貨だバカタレ」
でぇぇ、思わず付き添いずの冒険者さんを見る、顔色が青かったり、横向いてたり、俯いてる。
「ま、タダでいいわい、久しぶりに良いものが聴けた」親方~、見た目通りの太っ腹。
「わしも今晩は酒場に行くぞ、ステージ前を取って置いてくれよ?」うんうん。
「親方今晩だけじゃないじゃん」とは飾りだった冒険者さん。
猪甲虫を置いて行こうとすると、それも要らん、村長ん所でも放り込んどけだって。
商売になるのかね親方って?食っていければ良いらしい。
自分も少しはお金貯めて、剣盤のメンテとかどんどん頼もうっと。
さて、村長の館前到着、何故に村長?首を傾げていたら、冒険者さん曰く。
「小さな村だと各種ギルドや宿屋・郵便・役場・銀行等々の公共事業は村長さんがやる」
大変だねぇ、人口が少ないから暇らしいけど。
娘さんらしい人が猪甲虫を鑑定、3金貨と60銀貨らしい、お金欲しいからそれでいいです。
「じゃ、ギルドカード出して」
……えー。
「……冒険者ギルドカードよ?」
「……無いとまずいですか?」
「じゃぁ、作りましょう。吟遊詩人さんね。ここに名前と……」
周りから生温い眼で見られている。初心者なんだからいいじゃん。
割と手続きはサクサク進んだ。読み書きもバッチリ、チーットって便利だな。
そのまま泊まる部屋を頼んで食堂へ、そういやこちらで始めての食事だ。
あれ?鯖味噌定食?好きだけどさ。
給仕してくれたお姉さんが、今夜は歌ってくれるんでしょう?って、酒場ってここか~。
親方の席を予約してついでに20銀貨で親方の飲み代を払っておく、これぐらいはね。
冒険者さん達を手伝ったり、酒場で営業したり結構充実している。
親方も毎日見に来てくれる。(ただ酒だからじゃ無いよね?)
くだらないことを考えていたら、二番目の娘さんがお客さんだって呼びに来た。
ファンかしら?こっちでのサインまだ考えてないよ、嬉しいけど困っちゃう。
役場部分の応接間に通され、派手な服のおじさんが……
「始めまして、スクローファ王国音楽著作権協会から来た。マス・オ・デ・フィグータ・スクローファと申します」
と、ソファーの前のテーブルに鞄から、広字苑&大字林位の紙束を出して私の方へずいっと。
「さて、この度、新規に吟遊詩人になられたそうですね。簡単に音楽著作権のお話と協会の役割と仕組み等説明させていただきます。こちらの1頁目を御覧下さい。そもそも、音楽著作権の無い頃は、折角新しく作曲や作詞をしても無許可で演奏、盗作が当たり前で著作者の懐に還元されるべきものがありませんでした。それでも自分も含め皆やり合ってるからいいかで済んでいたのですが、演奏だけうまい人が徐々に増え著作者と諍いが大きくなってしまったのです。それは我が国だけでなく、他国に於いても同様でした。我が国の例で言いますと、最初は、一回の演奏で50銅貨一律で徴収になったのですが、誤魔化したり、著作者も全ての演奏者を回ることが出来ず、非効率なものでした。2頁です。そこで出来たのが協会の前身である吟遊詩人組合です。このギルドは、著作の登録・演奏による著作使用料の徴収代行が主でした。但し、無断演奏の防止等は依然手が回りませんでした。それでも以前に比べれば随分ましになったのです、3頁へ。余裕の出てきた吟遊詩人の内、自分の楽器を細工物組合や魔術師組合等に頼み改良を加え、今の剣盤の原型が完成しました。当時はまだ音色も単調で扱い易い楽器だとはいえなかったのですが、この楽器は人気を博しました、4頁です。バード・ギルドが産声を上げた頃。もう一つの……」
コンコンコン
「お茶をお持ちしました。ご苦労様です」
二番目の娘さんが生温い目で、香茶をテーブルに。あの時の目は、こういうことか。
「有難う、ちょうど喉が渇いてね。」
そら、そうだろうさ。
「失礼しました」
即効逃げやがった。
「何処まで話したかな? そうそう、バード・ギルドと時を同じくして、傭兵たちもギルドを立ち上げました。彼らは、彼らで雇い主の不払いやリタイヤした時の生活保障など個人や小グループでは解決出来ない問題を…… 聴いてますか?大事なお話ですよ。理解してもらうまで何度でも、説明しますから心配しなくても大丈夫ですよ」
悪魔の様に微笑むなよ。
バードが少ないのはこいつ等のせいじゃねぇのか?自由気ままに歌いたいだけなのに、このうざいの何とかして~、天使様HELP ME!
長文失礼しました。 ※フィクションです 万が一 実在の団体等に似ていたとしても まったく関係ありません。