少年Kと私(愛美編)
今回は愛美目線の話です。
「教科書、まだもらってないんだよね?見せてあげる。」
そう言って男の子は、教科書を私の方に置き直す。
「あっ、ありがとう!」
お礼を言う私に、ニッコリと微笑む男の子。
私はその一瞬で恋におちた。
隣の席の優しい男の子に、私は恋をした。
小学校三年生の時に転校して来た私と、少年Kの出会い。
私の初恋の人、武田和志との出会い。
それから彼とは休み時間になると、よく話すようになる。
家が近所ということも分かり、一緒に帰ることもあった。
一緒に遊びに行くこともあった。
勿論、二人だけではないが…。
私と彼との仲を面白がって、囃し立てる子もいたが、彼は全く気にしていなかった。
私は自分の気持ちを彼に悟られないように、必死に隠した。
幸い、鈍感な彼には気付かれることはなかったが、必要以上に仲良くなり過ぎてしまった。
どうやら私は、彼の恋愛対象から外れてしまったようだ…。
傍にいればいつかは振り向いてくれるかも、という淡い期待を持って同じ高校を選んだ。
ところが、和志は高校入学早々、同じクラスの山本純子ちゃんに恋をしてしまう。
アイツは、その恋心は誰にも気付かれていないと思っているようだが、私にはバレバレだ。
自分が好きな相手が、誰のことが好きなのか、そんなことは本人に聞かなくても分かる。
だっていつも彼を見てるから…。
どうせ純子ちゃんが、みんなに同じように向ける優しい笑顔に、アイツが勘違いしただけ。
中学生の時も、似たようなことがあったけど、彼はその子に告白したりはしなかった。
だから、今回も同じだと思った私は、特に焦ってはいなかった。
和志の良さが分かるのは、私だけという自信もあったから…。
あの時までは…。
そして二学期になり青島あかりが転校して来る。
あの子は一体、何なの?
せっかく仲良くしようと思った私を拒絶しただけでなく、和志にちょっかい出したりして!
和志も彼女の肩を持ったりして、まんざらでもないようだし。
今日だって、私の誘いを断って二人で帰ってるし…。
純子ちゃんの時とは違い、私はかなり焦った。
和志が青島あかりに取られる気がして…。