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無限の火花の世界  作者: Rocky Pancakes
第1章:目を開きはじめて」
9/19

エピソード9: それが続いていた間

すでに慣れ親しんでいた、穏やかな日々のスライドショー。

前へ進む私たちが、いつか戻るかもしれない記憶。

胸の奥に残り続ける、忘れがたい感情——。

一週間は、静かに――

ほとんど優しく――過ぎていった。

まるで太陽さえも、

グランダル家のために光を和らげてくれたかのように。


***


川辺は穏やかで、

水がなめらかな石にささやくように流れている。


そこは、ハーリンのお気に入りの場所。

いつもなら、本を抱えて座る場所だ。


けれど今日は違った。


彼女は地面にしっかりと足を踏ん張り、

眉をきつく寄せて集中している。


川向こうに垂れ下がる枝へ向かって、

片手をまっすぐ伸ばしていた。


近くで、メリルが見守っている。

胸の前で手を組み、目を輝かせて。


「できるわ、ハーリン」

彼女はやさしく言った。

「ママが言ったこと、思い出して」


ハーリンは深く息を吸った。


ふぅ……


枝が、震えた。


ほんの少し――けれど、確かに動いた。


一瞬、ハーリンは固まる。

そして次の瞬間、朝日のように顔が輝いた。


「できた! ママ、できたよ!」


メリルは思わず駆け寄り、

ハーリンを抱きしめる。


頬に、額に、

何度も何度もキスを降らせながら。


「できるって、分かってた」

そう言って、

額と額をそっと重ねる。


「ずっと、信じてた」


ハーリンはくすくすと笑い、

その背後で川面がきらめいていた。


***


テディベアが高く放られ、

ぽすん、とやわらかく湯の中へ落ちた。


湯気が立ちのぼる。


木の湯桶の中で、

ハーリンは腰まで湯に浸かり、テディを拾い上げる。


背後では、

短パン姿のヘイルが真剣な顔で彼女の髪を洗っていた。


一本一本、

丁寧に。


「なあ」

ヘイルはにやりと笑う。

「テディベアだって、風呂に入るんだぞ」


ハーリンは少し考え――

とても真剣にうなずいた。


片手で湯をすくい、

テディの頭にかける。


てっぺんを、

ごしごし――

ごしごし――


ものすごく集中して。

舌が、口の端から少しだけ出ている。


ヘイルは吹き出した。


「ははは! そんな洗い方したら、

かわいそうなやつ、ハゲちまうぞ」


身を乗り出し、

大げさに手本を見せる。


「ほら、こうだ。やさしくな」


そう言って、

娘の頭を軽く弾く。


「いった……」

ハーリンはむっとする。


ヘイルはその場所をなで、続けた。


「まず後頭部。次に首の後ろ」

手を移し、

「耳の後ろも忘れるな」


そして、テディの額をちょん、と叩く。


「一番大事なのは前髪だ。

顔だからな。人はまず顔を見る」


ハーリンは、

まるで古の教えを授かるかのように、

厳かにうなずいた。


「ありがとう、パパ」


教えられた通り、

彼女はテディの髪を洗い始める。


その背後で、

ヘイルはこっそり笑っていた。


***


緑の丘から、村が見渡せた。


ハーリンは腕を伸ばし、

震えながら立っている。


背後から、

ささやき声と小さな笑い声。


何人かの子どもたちが立ち、

その声が風に混じって流れてくる。


不安に、

何度も振り返りそうになる。


そのとき――

そっと、腕に触れる手。


「ハーリン」

メリルがやさしく言った。

「ママを見て」


ハーリンは振り向く。


メリルは、穏やかに微笑んでいた。


「気にしなくていい」

前髪をそっと整えながら。

「ここにいるのは、ママだけ。

ママは、ずっとそばにいるわ」


世界が、静まった気がした。


ハーリンはしばらく母を見つめ、

小さくうなずく。


そして前を向き、

ぎゅっと目を閉じた。


***


庭で、

ハーリンは腕を上げ、目を閉じている。


そばで、ヘイルが姿勢を変えず見守る。


「ハーリン……?」

家の中から、メリルが出てきた。


ヘイルはすぐに振り向き、

唇に指を当てて合図する。


集中する娘を見て、

メリルは立ち止まり、

黙って見守ることを選んだ。


閉じた瞼の奥――


闇の中で、

青と赤の光の粒が、

雪のようにゆっくり漂っている。


やがて赤い粒だけが集まり、

伸ばした手の前で渦を巻く。


圧縮され――


一瞬、火花が走り、

消えた。


ハーリンは、ゆっくり目を開く。


ヘイルの手が、

肩に置かれた。


困惑したように見上げる。


「……できた? パパ」


ヘイルはくつくつと笑った。


「じゃあもう、

石こすって火を起こさなくていいな」


***


笑い声が、丘に響く。


ハーリンとメリルは、

追いかけっこをしていた。


そのとき――


「メリル、ちょっと見てくれないか?」


丘の下から、

村人が手を振る。


二人は立ち止まる。


「今行きます……!」


メリルはうなずき、

娘の頭にそっと手を置いてから歩き出す。


ハーリンは、

母の服をつかみながらついていった。


弱った作物の前で止まる。


「最近おかしくてな……

どれも枯れてきてるんだ」


メリルは膝をつき、

土に手を当て、目を閉じる。


淡い緑の光が広がり、

大地へと染み込んでいく。


葉が震え、

ゆっくりと背を伸ばし、

深い緑を取り戻した。


村人は、

安堵の息を吐いた。


「あなたがいなかったら、

この村はどうなっていたか……」


メリルはやさしく微笑む。


「少し手を貸しただけです」


男は、

メリルにしがみつくハーリンに目を向けた。


視線に気づき、

ハーリンはさらに身を縮め、

母の影に半分隠れる。


男はしゃがみ込み、

目線を合わせる。


「誇りに思いなさい、ハーリン」

穏やかに言う。

「魔法がなければ、

今年は越せなかった」


ハーリンは答えず、

服に顔を埋め、ちらりと覗いた。


メリルは娘を見て、

あたたかく微笑む。


「大丈夫よ」

そう言って、

頭をなでた。

— 作者より —

エピソード9を読んでくださってありがとうございます!

魔法そのものが火を生み出したわけではない。ただエネルギーを引き出しただけだ。

ハーリンは空気に隠された成分を引き離し、目の前で渦を描くように操った。熱が逃げるよりも速くそれらを押し潰した瞬間、閉じ込められたエネルギーが一筋の鋭い火花となって弾けた。

読者の皆さんの感想をいただけると、とても嬉しいです。

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