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無限の火花の世界 [The Old World]  作者: Rocky Pancakes
第3章:泡の向こうへ
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第33話:私の二人目の『親』……?

えっ、これ……どうやって説明するつもり!?

その日の朝早く――


「アリナー先生、アリナー先生――!」


ハーリンはしつこく肩を揺らした。


「んんん……あとちょっとだけ……!」


アリナーは子供のように空を払うように手を振り、顔をさらに枕に埋めた。


「アリナー先生、早く起きないと――」


ふわぁ……


小さく、ぴちゃりと唇を鳴らす音がそばから聞こえた。


「ハーリン……なんでこんな早いの……?」


床で寝ていたユキグが体を起こし、半分閉じた目で頭をかいた。


それでもハーリンは、アリナーの腕を引っ張り続けて離さない。


「んぐっ――!」


「ユキグおじさん、昨日は私のせいで授業が早く終わっちゃったから……今日はその分、頑張りたいの――」


ユキグは大きくあくびをし、体を伸ばした。


「あー……」


「よし、任せろ。」


ベッドへ歩み寄り、ハーリンにどくよう合図する。


そして――


なんの前触れもなく。


アリナーをひょいと抱え上げた。


しかしアリナーも簡単には負けない。


枕にしがみついたまま、顔を埋めて離さない。


ユキグはそのまま肩に担ぎ上げ、軽く弾みながら歌い始めた。


「太陽が昇るぞ、さあ起きろ――

太陽が昇るぞ、心も飛ぶぞ――」


ハーリンは思わず笑いながら、その周りをぐるぐる走り回る。


リズムに合わせてぴょんぴょん跳ねる。


「うるさぁぁい――!」


アリナーはうめきながら、枕で何度も叩きつけた。


ドン。

ドン。

ドン。


「痛っ、痛っ、わかったわかった――

下ろすって!」


ハーリンはくすくす笑う。


ようやくユキグはアリナーを地面に下ろした。


「ほら、これで二人とも起きただろ。」


腕を組み、胸を張って得意げに言う。


――ドン。


枕が顔面に直撃した。


「気持ちよく寝てたのに!」アリナーが睨む。


ハーリンは慌てて駆け寄り、そっとスカートを引いた。


「アリナー先生……おじさんのこと怒らないで……」


「私が早く起きたかっただけなの……勉強したくて……」


アリナーは小さく息を吐き――


ふっと笑った。


「じゃあ今日は、もう一度あなたのマナを確認するわね。」


指を向けながら言う。


「マナ……?」


ハーリンの背筋にぞくっとしたものが走る。


それを見て、アリナーは腰に手を当て、少し顔を背けながら目を閉じた。


「じゃあ……やっぱり寝直そうかしら――」


片目だけ開ける。


ハーリンはもじもじと手をいじる。


「……いえ。わ、私は……大丈夫……」


……


ジュウゥ――


くんくん。


二人同時にキッチンの方を向いた。


「ユキグ、何作ってるの~?」


「おじさん、何作ってるの?」


ユキグはフライパンを持ち、手首をひねる。


黄金色の生地が宙に舞い、綺麗に戻る。


「これはな――」


木の皿を二枚取り出し、それぞれにパンを乗せる。


「モーニングエネルギーだ。」


フライパンを傾け、黄金の生地をパンの上に流し込む。


ぱたん。ぱたん。


手を軽く払うと、そのまま皿の横を通り過ぎ――


自分用のただのパンを掴む。


一口かじりながら、扉へ向かう。


「じゃ、行ってくる――」


カチッ。


「はいはい。仕事頑張って~」アリナーは適当に返す。


視線も足も――すでに食べ物に釘付けだった。


「ユキグおじさん、見送りたい――!」


ハーリンは慌てて後を追った。


***


「ユキグおじさん、早く帰ってきてね。」


足にしがみつき、顔を押し付ける。


ユキグは少し驚きながらも、優しく頭を撫でた。


「どうしたんだ、ハーリン?」


「アリナーにいじめられたか?」と冗談めかす。


ハーリンはぶんぶんと首を振る。


「毎朝起きたときには……もういなくて……」


「朝ごはんも……もうできてて……」


ぎゅっと抱きしめる力が強くなる。


「ありがとう。」


「おいおい……」


ユキグは髪をくしゃくしゃにする。


「そんなに寂しがるなよ。今はアリナーがいるだろ?」


ハーリンは答えない。


ただ、少しだけ強く抱きついた。


……


「ハーリン!もう起きてたの?迎えに来たよ!」


声に振り向く。


アニーが元気よく駆けてきて、その後ろにはヘクラド、ダニ、ボボル。


そして――


見知らぬ少女。


長い黒髪、背丈ほどの杖、先端には青い宝石。


少し弱々しく、息も荒い。


「今日はフーガも連れてきたよ!」アニーが手を振る。


ハーリンの目が輝き、一歩前へ――


だが止まる。


視線が落ちる。


「でも……私……」


……


「ハーリン。」


ユキグが肩に手を置く。


振り返る。


「勉強はいつでも取り戻せる。」


「でもこういう時間は――

戻ってこない。」


優しく笑う。


ハーリンはその表情を見つめたまま――


胸の奥で、何かが静かに揺れた。


***


「ほらね?言ったでしょ、あの子のお父さんユキグだって!」アニーが誇らしげに言う。


フーガは息を整えながら前へ出た。


「はじめまして、ハーリンのお父様。」


丁寧にお辞儀する。


そして手を差し出す。


「フーガと申します。よろしくお願いします、ハーリン。」


ハーリンは笑顔で握り返す。


「ハーリンです!」


その時――


「美味しかったわ、ユキグ~」


アリナーが外に出てきて、肩に手を置いた。


「毎朝ご飯作ってるの?」


子供たちに気づいていない。


「うわあああ――!」


アニーの目が輝く。


「アリナーってハーリンのママ!?」


「じゃあユキグおじさんが旦那さん!?すごい!」ダニが続く。


「だからあんな魔導書を持ってるのか……ハーリン。母親が大魔導師アークマギステルなんだな……」ヘクラドが感心する。


「……この前、わざと捕まらせてくれたのか……?」ボボルがぼそっと呟く。


フーガは再び深く頭を下げた。


「ハーリンのお父様、ユキグ様!

そしてその奥様、アリナー様!」


ユキグは固まった。


はっと息を呑み、目を見開いたまま――

ハーリンの方を振り向く。


ハーリンもゆっくりと顔を上げ――


同じように、目を見開いて見返した。


「母!?娘!?」アリナーが叫ぶ。


ハーリンは何も考えず家の中へ駆け込んだ。


……


ユキグはゆっくり――


本当にゆっくりとアリナーの方を向く。


ユキグは――


本当に、本当にゆっくりとアリナーの方を向く。


アリナーは鼻をひくつかせ、片眉をぴくりと上げる。


信じられない、というように唇が歪む。


「旦那……?!」


ユキグは口を開く。


声が出ない。


「わ、私は――」


その時――


ハーリンがパンをくわえて戻ってきた。


そして固まる。


次の瞬間――


子供たちの方へ振り向く。


「よし!パパとママも会えて嬉しいって言ってるから――

遊びに行こ!」


ぐいっと押して、そのまま連れていく。


「ユキグ……」


アリナーの表情が暗くなる。


「これ、どういうこと?」


「仕事行かなきゃ!!」


ユキグは振り向きざまに全力で逃げた。


一瞬で姿が消える。


アリナーはその場に取り残される。


「……は?」


……


「……ていうか、勉強は?」


……


「……ちょっと待って、晩ごはん誰が買うの!?」

— 作者より —

第33話を読んでくださってありがとうございます!

二人とも、この夜を無事に乗り越えられますように……。

読者の皆さんの感想をいただけると、とても嬉しいです。


今週の更新については、次の3話を公開する予定です。

木曜日、金曜日(本日)、そして日曜日に更新します。


もし順調に進めば、土曜日にも1話追加して、合計4話になるかもしれません。

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