エピソード3: 奇跡
ハーリンが成長するにつれ、家族の笑顔はますます輝きを増していった。外の人が何を言おうと、彼らにとってこれは人生で最も大切な出来事なのだ。
一方その頃、メリルは夕食の準備をするため、庭で野菜を摘んでいた。
そのとき、ハーリンがいつの間にか家を抜け出し、母のほうへとハイハイで向かっていた。
ちょうどその頃、聞き慣れたヘイルの声が帰ってきた。
「ただいまー!」
メリルは振り返り、額の汗をぬぐって道具を置くと、彼を迎えに歩み寄った。
だが――
夫の体にはまた新しい傷。
シャツもあちこち破れている。
メリルは思わず怒鳴った。
「今日も洞窟に入ったの!? 」
ヘイルは気まずそうに笑いながら答えた。
「心配いらねぇよ。こんなの数日で塞がる。」
メリルはため息をつくと、片手を上げて詠唱を始めた。
「欠けたものを赦し、失ったものを戻し、
我が身を分け与え、その過ちを繕え……」
治癒が進む中、ヘイルはふと視界の端で何か小さく動くものに気づいた。
――ハーリンだ。
嬉しそうに、こちらへ向かってハイハイしている!
「おっ? 今日は小さな天使がお出迎えか?」
その声に反応して、メリルも素早く振り返った。
娘がゆっくりと外に出てきているのを見て、目を丸くする。
「ハーリン! どうしてこんなところに!? ほら、もう服が泥だらけじゃない!」
迎えに行こうとしたその瞬間――
思いもしないことが起きた。
ハーリンが小さな手を地面につき、
ぐっと体を押し上げて――
ふらふらと、小さな足で立ち上がったのだ。
その光景に、夫婦は声も出ないほど驚いた。
だが次の瞬間には、2人揃って大声で応援を始める。
「がんばれ、ハーリン!」
「こっちだよ、ハーリン!」
「そのまま来るんだ!」
近所の人たちはため息をつきながら通り過ぎていった。
(この家族、もう一年ずっとこんな調子だな……)
ハーリンの一歩一歩に、2人は息を呑み、体を乗り出して見守る。
やがて――
ゆっくり、確かに、2人のもとへ歩き切った。
メリルは歓声を上げ、飛び跳ねて喜んだ。
ちょうど通りかかった老人を見つけると、手を振りながら叫ぶ。
「見た!? 今の見た!? あれが私のハーリンよ! うちの子よ!!」
老人は驚きのあまり全力で逃げ去っていった。
ヘイルはハーリンを抱き上げ、高く掲げてぐるりと回す。
「よし! これぞグランダル家の娘だ!!」
— 著者より —
エピソード3を読んでくださってありがとうございます!
皆さんと同じくらい、私も驚いています!
次はハーリンがどんなことをしてくれるのか、楽しみですね。
ぜひ、あなたのご感想をお聞かせください!
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