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無限の火花の世界  作者: Rocky Pancakes
第2章:ママ……?パパ……?
14/25

幕間:夢(誕生日特別編)

物語のメインディッシュの合間にある、ちょっとしたおやつ。

色鮮やかな野原が広がり、

花と草が四方へと生い茂っていた。


そよ風に、ハーリンの髪がやさしく揺れる。


彼女の隣には、神エル=グリがいた。

その手は彼女の手をしっかりと包み、二人は青々とした草原を歩いている。


――それだけが、確かに“現実”だった。


彼の鎧も、王冠も、

金と銀の光が混ざり合い、まぶた越しに見る光のように輪郭が曖昧だった。


エル=グリは歩みを緩め、

小さな花の前でハーリンをしゃがませる。


彼はその花をそっと摘み取った。


「すべてのものにはエネルギーがある」

静かな声で、彼は言った。

「そして、エネルギーは生み出すことができる」


少し間を置いてから、続ける。


「問題は――

お前に、それだけの“意志”があるかどうかだ」


彼は花を、ハーリンの手のひらに置いた。


ハーリンはそれを見つめる。


いつの間にか、

世界は闇に包まれていた。


周囲を見渡す。


――静寂。


空もない。

地面もない。

人影も、ひとつもない。


果てしない黒に、すべてが飲み込まれていた。


彼女は、手の中の花を見る。

それは、すでに枯れ果てていた。


冷たい風が、彼女の身体を撫でる。


次の瞬間――

ハーリンは崖の上に立っていた。


眼下には、混沌の光景が広がっている。

煙、粉塵、悲鳴。

燃え上がる村から、熱気が顔を打った。


――そして、見えた。


破壊の中心に立つ、

人のような、しかし人ではない、黒い影。


距離があるはずなのに、

はっきりと見えすぎるほどに。


その影が、こちらを向いた。


視線が、彼女を捉える。


背筋に、冷たいものが走った。


ハーリンはよろめき、後ずさる。


崖から離れようと、這うように下がった――

その時、下から“手”が伸びてきた。


黒い影が、崖を登ってくる。


ハーリンは迷わなかった。

背を向け、走り出す。


「パパ! ママ!」


叫んだはずの声は、

空気に吸い込まれ、形を成さない。


――そして、すべてが消えた。


ハーリンは、果てしない闇へと落ちていく。


彼女は、目を覚ました。


胸が激しく上下し、息を荒く吸い込む。

顔は汗で濡れ、歪んだ表情のまま――

次の瞬間、泣き出した。


テディベアを抱きしめ、

彼女は部屋を飛び出し、隣の両親の寝室へ駆けていく。


「ママ……パパ……」


扉の前で立ち止まり、

声を上げて泣き続けた。


空には、まだ月が浮かんでいる。

夜は、終わっていなかった。


きぃ……と扉が開き、

眠たげに目をこすりながら、メリルが顔を出す。


「どうしたの、ハーリン……?」


その後ろで、

ヘイルが半分寝ぼけたまま起き上がる。


「なんだ?」

きょろきょろと見回しながら言った。

「世界の終わりか?」


ハーリンは母の足に顔をうずめ、

ドレスをぎゅっと掴む。


「ママ……悪い夢を見たの」


「今夜は、一人で寝たくない……」


メリルは迷わず、娘を抱き上げた。


「いいわ。大丈夫よ」

やさしく囁く。

「私たちがいる」


「もう、安心していいの」


彼女はハーリンをベッドへ連れていき、そっと下ろす。

ハーリンはすぐに、父の腕に抱きついた。


ヘイルは、すでに再び眠りに落ち、よだれまで垂らしている。


メリルは軽く額を指で弾いた。


「もう寝てる……」

ため息をつく。


「ママ、パパをからかわないで……」

ハーリンが、甘えるような声で言った。


メリルは微笑む。


「はいはい。ハーリンのパパは、そっとしておくわ」


彼女は娘を引き寄せ、やさしく抱きしめた。


やがて――

三人は、再び静かな眠りへと落ちていった。

2026/1/10

この誕生日記念エピソードを読んでくださって、ありがとうございました

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