まずは魔法の世界からだ
「私、最早貴方が良いんですがビー太くん……」
「駄目だ、僕だけは駄目だ」
僕はご主人を知りすぎている、それに……
「折角、ようやく、二人でゲームが出来るんだ。僕と遊んでくれ、存分に。最後のお願いなんだ、ご主人がどんなに気持ち悪くても、僕の幸せはそんなあんたにゲームを贈ることだ」
頼むから付き合ってくれ、ビー太くんはそう言った。
「……、分かった、分かったよビー太くん! 私と遊ぼう、ずっとずっとありがとぉ……」
私は泣いた。主従って切ない。本当に気持ち悪がられていたとしても感動的だ。
「私のヘキ、全部バレてて清々しいよ、ビー太くん……」
にやっとビー太くんは嗤った。
「単純で助かる。じゃあ、まずは最近ご主人がプレイしたソフトから軽く始めるぞ。魔法と学園ものの乙女ゲームだったな、育成パートが意外に難しいやつだ、お前のお気に入りはーー、攻略対象外のモブ教師ーー」
本当にヘキがばれていて進めやすいんだね、ビー太くん。そして君もやっぱりゲームが大分好きだね?!
私が口をパクパクしていると、私達のいる森の奥から穏やかで音痴な歌が聞こえてきた。
この声、新しめ乙女ゲーム、マジカル・スターライトの……!
「待って、待って、ビー太くん! これってまさか、ルフナ先生? わ、わたし、寝間着なんだけど」
「大丈夫だ、お前はモブ令嬢の姿にしてやる。あの学園の制服はーー」
これだ、というビー太くんの声と一緒に、私の姿が変わる。
黒いフード付きのファンタジー私立学園らしい制服姿。
「さあ、はじめるぞ。本気の恋になるか僕に見せてくれご主人」
「……、が、がんばるよ、ビー太くん!」
乙女は適応力が無駄に高いんだ! ぶっとんだ世界設定の乙女ゲームが多いから!!
やったるでぇ、ゲーム大好き!
乙女はいつだって最強なんだから!!
私はビー太君と二人で笑った。